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2014-01-27 00:00
「脱金融化」と成長戦略を考える
田村 秀男
ジャーナリスト
新自由主義を批判し、資本主義の“脱金融化”を唱えるフランス政治経済学会会長のアンドレ・オルレアン氏に昨年末、都内で会い、つぎのような内容の話を聞いた。「われわれの分析では金融市場は公正でも効率的でもなく、経済全体を狂わせるし、経済は成長しない」「量的緩和で増発されるカネは金融市場の内部にとどまり、投機に向かう力を増幅させ、新たな株式バブルなど金融危機を引き起こす」「量的緩和で株価が上がっても、企業経営者は株主の歓心を買おうとして生産設備や雇用を増やさない」。
そこで、昨年の日本経済を大きく動かしたアベノミクス、とりわけ「第1の矢」、日銀の量的金融緩和策の成果を見てみる。日銀は11月までの1年間で65兆円も資金供給量(マネタリーベース)を増やし、金融機関から主に国債を買い上げてきた。量的緩和はドルなど他通貨に対する円安・株高を演出した。日経平均株価は11月末までの1年間で75%上昇し、東京証券取引所の株式時価総額は187兆円膨らんだ。実体経済にどれだけカネが回ったのか。マネタリーベースの増加額の97%、63兆円はそのまま日銀の当座預金にとどめ置かれている。貸し出し増加額は日銀資金供給増加額の22%以下の14兆円にとどまっている。
対照的に、日本の対外金融資産は9月末で総額130兆円、海外の対日金融資産増加分を差し引いたネットで24兆円増えた。名目国内総生産(GDP)の1~9月の前年同期比伸び率は0.58%にとどまる。日銀がお金を刷っても国内の生産活動にはあまり回らないのだ。それでも、オルレアン氏も米国の量的緩和はリーマン・ショック後の大恐慌を防止したと認める。日本の場合も、量的緩和に背を向け、小出し緩和に終始した白川方明前日銀総裁時代にデフレが加速したし、黒田東彦現総裁の「異次元緩和」とともに物価が上がり始めた。問題は経済成長だ。金融に頼らないで成長を果たすモデルをどう構築するか。
オルレアン氏は「国によって、やり方は違ってくる」と言い、フランスを引き合いに出した。「経済政策は国内投資を重視し、中小企業への投資を増やすべきだ」と。日本でも、フランスやドイツに劣らず中小企業の比重が高い。ことに雇用の3分の2は中小企業が引き受けている。しかも、中小企業は大企業と違って、内需依存型である。アベノミクス第3の矢である成長戦略を中小企業振興に絞ってはどうか。よく目を凝らすと、志と野心に燃える中小事業者は全国にごまんといる。例えば、航空・宇宙関連の中小企業がすでに全国17カ所でコンソーシアムを立ち上げ、日の丸超音速機の開発をめざす。政府は参入規制を撤廃し、民間資金を呼び込む。志ある中小企業が成長を担う体制作りこそが真の成長戦略ではないか。
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