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2014-01-23 00:00
(連載1)日本の民主主義と靖国神社の価値観
河村 洋
外交評論家
安倍晋三首相による突然の靖国神社参拝は、日本のナショナリズム復活に関する論争を呼び起こした。キャロライン・ケネディ米大使はアメリカ政府を代表して、安倍首相の参拝直後に「失望」という抑え気味のメッセージを発した。安倍氏の行動は、中国および韓国との緊張を高め、沖縄の普天間米軍基地問題の解決による日米関係好転の努力を無駄にしてしまった。問題は、日本が中国や韓国と抱える歴史認識の不一致ではなく、大西洋憲章に基づく自由主義世界秩序への抵抗と見られることである。靖国神社は、太平洋戦争の戦争犯罪人を数多くの無名戦士とともに合祀しているため、欧米では軍国神社(War Shrine)と呼ばれている。重要な問題は、この神社のイデオロギーである。私は2005年12月22日に靖国神社に実際に行ってみたが、参拝はしなかった。驚かされたのは、靖国神社が東京裁判に異を唱えていたばかりか、現人神たる天皇の名の下に無垢な若者達を自爆攻撃に駆り立てた特攻隊を礼賛していたことである。これはまさにアル・カイダがアラーの名の下に行なっていることである。
自爆攻撃を礼賛するイデオロギーなどは、暗黒時代の思想であり、理性と人間性に価値を置くルネサンス以降のいかなる文明とも相容れない。よって問題は、第二次世界大戦の戦勝国か敗戦国かではないし、また日本が中国と韓国に宥和すべきかどうかでもない。問題の焦点は簡明である。靖国のイデオロギーは人類の普遍的な価値観とは完全に異質なものである。あのアドルフ・ヒトラーでさえ、そのように野蛮で非人道的な戦術は採用しなかったことを銘記すべきである。神の名の下に組織的で大規模な自爆攻撃を行なったのは、戦時日本とアル・カイダだけである。日本の右翼はこのことを銘記すべきである。外国からの圧力や批判があるからではなく、日本国民がどのような立場をとるかが問題なのである。現在の日本は、西側民主諸国の中核として、テロリストが掲げる狂気と憎悪のイデオロギーと戦う立場にあるはずである。
好むと好まざるとにかかわらず、日本の政策形成者達は、安倍氏の靖国参拝が日本のアジア太平洋外交に及ぼす影響を分析する必要がある。広く知られているように安倍氏は、日本を戦後世界秩序の「くびき」から解き放ち、国家の誇りを取り戻そうとしている。しかし安倍氏の靖国神社への参拝は、特に中国と韓国をはじめとしたアジア諸国からは、戦中の軍国主義を正当化しようとする試みであると見なされている。またアメリカとの緊張も重要である。ブッシュ政権はサダム・フセイン打倒のための有志連合を必要としていたため、小泉純一郎首相(当時)の靖国参拝を許容した。しかし、オバマ政権はアジアへの戦略的なリバランスを採用しているので、日本が中国や韓国と「不必要」に衝突する事態を好ましくは思っていない。これらの点から、ニュー・サウス・ウェールズ大学のオーレリア・マルガン教授は「安倍氏の『自己満足的』な靖国参拝が東アジアの安全保障に有害だった」と批判している。
ここで、オバマ政権が、従軍慰安婦問題で辛辣な反日姿勢をとり続ける韓国のパク政権に態度の軟化を働きかけたことに注視すべきである。ジョセフ・バイデン副大統領は、さる12月初旬にが韓国を訪問した際に、パク・クネ大統領に日本との関係改善を求めた。しかし、今回の安倍氏の靖国参拝はそうした米国の努力を無駄にするものだった。他方で、安倍氏の靖国参拝の背景を理解する必要がある。日本の首相による軍国神社への参拝の有無を問わず、北東アジアの緊張は悪化の一途をたどっている。韓国のパク政権は就任以来、親中化を強めている。中国は尖閣諸島周辺にADIZ(防空識別圏)を一方的に設定して、海洋での日米の優位に挑戦を突きつけている。アメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・オースリン常任研究員は「安倍氏は、ジョセフ・バイデン副大統領が12月初旬の習近平・中国国家主席との会談に宥和的な姿勢で臨んだように思われた」と指摘する。つまり、安倍氏は日本が歴史認識問題で中国や韓国に屈服しないと見せつけるために参拝したのだということである。(つづく)
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