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2014-01-18 00:00
米国政府の「失望」声明の意味を考える
若林 洋介
学習塾経営
昨年末(12月26日)の安倍首相による靖国参拝後、米国政府から「失望」の念が表明された。そのことの意味について考えてみたい。参拝の10日前の『ザ・ガーディアン』紙(英国)は「東アジア情勢は、中国が尖閣諸島を含む東シナ海に一方的に防空識別圏(ADIZ)を設置した結果、安倍首相の対応次第では武力衝突に発展する恐れがある。同盟関係にあるアメリカは日本が攻撃された場合には援軍を派遣することになるが、中国軍指導部の中の強硬派は、自らが“核心的利益”と呼ぶもののため戦闘も辞さない構えでいる。東アジアにおいて超大国が正面からぶつかり合う危険性は、現実のものとなっている」と述べている。
実際にも、12月5日南シナ海で活動中の米海軍のイージス巡洋艦が、中国海軍の艦船から停船を要求された上で、航行を妨害され、緊急回避行動を取っており、米国政府は中国政府に対して「不測の事態を招く危険な行動である」として、抗議している。事態は緊迫しており、米国政府は「安倍首相の対応次第では武力衝突に発展する恐れがある」という認識に立っていると思われる。この点が、7年前の小泉首相の靖国参拝当時の東アジア情勢と現在のそれの決定的な相違点である。安倍首相は今回靖国を参拝するにあたって「ことと次第によっては、武力衝突に発展する恐れがある」との厳しい情勢判断認識をもっていたのかどうか。それが問われているのであり、米国政府は緊張感の欠けた安倍首相の認識に「失望」したのではないのか。米国政府は「何としても武力衝突を避けたい」との認識で行動しており、その認識は日本政府によっても共有されているはずと思っていたのが、そうではなかったということになり、それが「失望」表明になったと思われるのである。
そこで次の点が検討されなくてはならない。「安倍首相の対応次第では武力衝突に発展する恐れがある」という認識を、安倍首相は、米国政府(並びに国際社会)と共有していたのかどうかという点である。もし、安倍首相が中国の防空識別圏の設定以降においても「武力衝突に発展する恐れがある」という情勢認識をもっていなかったとすれば、それはあまりにも甘い見通しであり、政治家として無責任であるということになる。またもし、安倍首相が「武力衝突に発展する恐れがある」という厳しい情勢認識をもっていたとすれば、米国との情勢判断認識の共有は日本政府にとって最優先事項でなければならなかったはずだ。万一の場合、日本は米軍の出動を要請しなければならなくなるが、安倍首相の靖国参拝が、肝心要の米国政府の反対を押し切ってなされたものだということになれば、その尻拭い(後始末)を米軍にお願いするというのは、筋の通らない話になりかねない。そういう事態を安倍首相が想定していたとは、どうしても思われない。まさか安倍首相には、「靖国参拝がきっかけで武力衝突が発生しても、日本は自衛隊だけですべて対処できる」という自信があったわけでもないだろう。
このように見れば、米国政府のいう「失望」とは、まず第一に、「日米両国政府が「東アジア情勢の危機意識を共有できていなかった」ということに対する「失望」であり、第二に、「安倍首相は自分の行動(靖国参拝)の後始末(尻拭い)を米国(米軍)に押し付けようとするのか」という意味での「失望」である。これに対して安倍首相が発するメッセージが「国の指導者が、国のために生命を捧げた方への尊崇の念をあらわすことに、問題はない」というだけであれば、それは米国政府の「失望」の念を和らげるものではなく、むしろ日米の間の認識の溝をさらに広げるだけの結果になりかねないのではないだろうか。
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