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2014-01-11 00:00
外円懇「ワシントンから見た日米関係」に出席して
池尾 愛子
早稲田大学教授
去る1月10日、日本国際フォーラム、グローバル・フォーラム、東アジア共同体評議会の共催による第96回外交円卓懇談会において、グレン・S・フクシマ氏から「ワシントンから見た日米関係」とのテーマで大変興味深いお話をうかがった。フクシマ氏の現在の肩書は、センター・フォ-・アメリカン・プログレス上級研究員である。日本人学生の留学動向がこの時にも、2013年12月20日の国際シンポジウム「未来志向の関係構築における日中青年交流のあり方」と同様に話題になった(2013年12月21日付本欄「シンポジウム『日中青年交流のあり方』に参加して」参照)。アメリカの大学や大学院に正規学生として留学する日本人学生の数が減少していることなどが憂慮されていた。正規留学生が減れば、確かに、国際機関に勤務する日本人が減少する可能性はある。
私はこうした場では、一般的な情報は持ち合わせていないので、大学のこと、学生のことはできる限り話したくない。現在、日本で最多の留学生をかかえる大学で教鞭をとってはいても、私が直接会う機会のある学生はその一部である。また、留学生の比率が日本でより高い大学は他にあり、理系の学部・研究科では、少人数授業を通じて共同での実験や観察を通じて学問が修得されていることであろう。それでも、私が触れる限りの日本人学生たちの外国や外国人に対する関心にふれながら、私の姿勢を紹介しておくことにより、アメリカからの誤解がある程度は解消されるのではないかと期待したい。
大学キャンパスの中で、日本人学生と外国人学生が出会う機会がかなり多い。確かに、こうした環境では、「反中」や「反日」の感情は湧きにくいといえる。さらに、経済・経営系の学部や研究科で教えていると、日本人学生たちの間では中国経済の動向や中国とのビジネスの可能性についての関心が高いことがわかる。交換留学や私費留学により、中国語をはじめ近隣諸国の言語をまず修得しようとする学生たちも目につく。「反中」になるよりも、近隣の国を理解したいという気持ちの方が強いことに間違いない。学問分野により、学生たちの中国に対する考え方が大きく異なる可能性がある。
2012年秋には、一部の学生たちの間では尖閣諸島等に絡む領土問題が話題になり、留学生を含む学生同士で歴史や関係諸国の政府の態度を調べた上で、議論がなされていたようだ。しかし私の場合、少人数の授業を除いて、一般の授業では、尖閣諸島問題にはふれないようにして淡々と授業を進めた。同年12月に日本で政権交代が起った後には、私自身はデモクラシーや政権交代にふれたりコメントしたりすることなく、授業を進めた。2013年度には、尖閣諸島等やデモクラシーが話題にならないように、やはり淡々と授業を進めてきた。これらの問題が出ると、一部の学生が浮足立ち、通常の授業が進められなくなる恐れがあるからだ。気がつけば、尖閣諸島問題とデモクラシーがセットになっていて、どちらも、少なくとも留学生が交じる経済・経営系授業では回避したくなるのではないか。尖閣諸島問題にしろ靖国問題にしろ、デモクラシーに対する要望をかき消すために取り上げられているように、私にはみえるのである。そうは感じても、教室ではやはり淡々と授業を進めていくつもりである。
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