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2014-01-11 00:00
不正マネーに依存する中国経済
田村 秀男
ジャーナリスト
中国共産党は昨年の第18期中央委員会第3回総会(3中総会)で、「全面的な改革深化」を決議した。西側メディアは一斉に、政治改革なしの経済自由化の限界を警告したのだが、ないものねだりだ。実利優先の党官僚は利権拡張の餌により不正マネーを取り込む成長モデルにギアシフトした、とみるべきだ。早い話、李克強首相の主導で上海に「自由貿易区」が9月に設置されたが、大幅に規制が撤廃された同区の進出企業234社のうち外資は21社に過ぎず、大半は国有企業である。党中央が国家全体の予算と金融を支配し、地方政府と国有企業に資金を配分、党官僚が支配する地方政府や国有企業がそのカネを投資して、開発や生産に関与して収益を上げるというシステムの中での、自由ビジネス特区であり、主要プレーヤーは党官僚なのである。
党官僚は「市場重視の改革」、すなわち経済自由化で利権拡張の機会を得るので、不正資金は今後さらに膨張する。不正資金は、香港経由などで海外にいったん移されたあと、「外資」を装って還流する。大半は投機的で「熱銭」と呼ばれ、規模は半端ではない。不正蓄財の統計はもちろんないが、およその見当は付けられる。厳しい外国為替管理体制を敷く中国で、海外との間で合法的に出入りできる資金は、(1)貿易収支の黒字または赤字分、(2)中国からの対外投資に伴う利子・配当収入から外国企業の対中投資の利子・配当収入を差し引いた所得収支、(3)外国からの対中直接投資である。
これら合法資金の増加額合計から外貨準備増加額を差し引けばよい。そう計算すると、非合法資金はリーマン直後に年間2000億ドル(約20兆2900億円)規模で逃避したが、党指令による融資増で値上がりし始めた不動産に熱銭が還流し、不動産や金融のバブルを引き起こした。バブル崩壊不安が生じた11年後半から熱銭は引き揚げ始め、資本逃避が続いたが、今年4~6月期には再び流入に転じた。その結果、不動産相場は反転、値上がりし、バブル崩壊危機をしのいだ。
実体景気のほうはどうか。中国は昨年、実質7%台の経済成長を続けたが、李首相は数字操作が可能なGDPデータを信用せず、運賃収入を基に集計する鉄道貨物輸送量などを重視している。その前年比増減率を追うと、リーマン後マイナスに落ち込んだあと急回復したが、輸出不振のために12年前半から再びリーマン後と同じように低下した。そして熱銭の還流とともに昨年7~9月にようやくプラスに転じた。巨額に膨れ上がった非合法資金を本土に還流させることで、中国経済は一息ついたのだ。今回の「改革」の狙いは、党幹部利権拡大をインセンティブにして海外に流出した不正利得を国内に再投資させ、経済を持続成長させることなのである。不動産・金融商品に熱銭を引き寄せるよりも、合理的には違いないのだ。
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