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2013-12-16 00:00
金融機関に甘い異次元緩和策
田村 秀男
ジャーナリスト
日銀はお札を大量に発行する「異次元金融緩和」を続けている。黒田東彦総裁は景気や物価動向への効き目を盛んに強調するが、総裁周辺には戸惑いもある。「金融政策の効き目が出るのは遅い。まだ過大評価だ」と言うのだが、これこそが日銀の本音と言ってよいだろう。事実、ことし4-6月期の景気や上場企業収益が好転をもたらした円安・株高は、昨年12月に発足した安倍晋三政権の「アベノミクス」への市場の期待による。4月4日に打ち出された異次元緩和は円安・株高基調を後押ししたことは間違いないが、日本の金融緩和自体がどこまで実体景気を押し上げ、脱インフレを促進したか、不明な部分が多いのだ。企業収益も大幅に改善したのは輸出主導の大企業であり、中小企業収益は全般的に悪化している。
異次元緩和、言い換えると、日銀が大量にお札を増札して金融機関に流し込む量的緩和政策は、私たちが所得を得て消費や投資をする実体経済を、多少時間がかかっても、よくすることができるだろうか。その答えはいたって常識的だが、金融機関がそのカネを融資に回さないことには、経済がよくなるはずがない。日銀による資金供給残高(マネタリーベース)と信用金庫を除く銀行の預貸率(預金残高に対する融資残高の比率)の推移を見ると、預貸率は「15年デフレ」が1998年に始まって以来、現在まで下降を続けている。この間の2001年初めから5年間、日銀は量的緩和政策を試みたが、預貸率は低迷を続けた。その後、08年9月のリーマン・ショックを受けて再び預貸率悪化に拍車がかかった。
日銀は遅ればせながら、お札の増刷に転じたが貸し出しは伸びない。異次元緩和を受けた6月末では預貸率は7割を切り、9月末でも67%に過ぎない。各地の中小企業と密着している信用金庫の場合は9月末で5割を切っている。各地域の経済がさびれるのは当たり前である。銀行や信用金庫は家計や企業からの預金の増加分の大半を融資に回さず、国債購入に充てる。その国債を日銀に売り、日銀に持つ当座預金口座にそのまま預ける。日銀はこの当座預金に0・1%の金利を払う。
民間金融機関としては貸し出しに回さなくても、日銀口座にそのまま眠らせておいても、金利収入が入る。銀行員はわざわざドブ板を踏んでまで融資先を探す必要はない。椅子に座っているだけでもカネになるのだ。これほど楽なビジネスが他にあるだろうか。日銀は民間向け融資を増やさない金融機関の当座預金の金利をゼロにするか、あるいは思い切って懲罰金利を徴収するくらいの政策に踏み切るべきなのだ。金融機関に対して甘い異次元緩和政策をいくら拡充しても、モノやサービスへの需要が増え、雇用や賃金が上昇するはずはない。
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