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2013-12-11 00:00
新卒一括採用を見直そう
坂東 真理子
昭和女子大学学長
2005年から日本の生産年齢人口は減少を始めている。日本経済が力強さを失った最大の要因のひとつだが、問題は頭数の減少ではなく、労働者の質の劣化である。日本の大企業の雇用は、高度経済成長の時期に成立した慣習がまだ温存されている。その最たるものが、新卒一括採用である。
まだ海のものとも山のものとも分からぬ新卒者を一斉に採用し、教育訓練、配置転換、時には社外研修や留学などで人材として育て上げる。このルートに乗れないと、非正社員として処遇が落ちるだけでなく、人材として育ててもらえない。また具体的なポストに必要な人材を採用するのでなく、「将来を背負う人材」を採用するので、現在身に着けている知識やスキルでなく、将来の可能性に着目することになる。その結果、大学の成績や大学で学んだ4年間の実績より、どの大学に入学する地頭を持っているかが重視される。学生の側も自分のことをしっかり把握しておらず、入社してからこんなはずでなかったと辞める割合が分野により異なるが3割を超えている。いったん退職すると、大企業の正社員にはなかなかなれない。
大学生が3年生の秋学期から就職活動を始めるというのは異常である。これから徐々に遅らせて4年生の春からということになるようだがそれでも早すぎる。教育再生会議も大学入学試験をどうするかばかりを論じているが、それより卒業資格試験を論じるべきだろう。企業も4年間じっくり勉強し一定の力を身に着けた、あるいは途中で留学やインターンを経験した学生を、個別に、必要に応じて採用するのが望ましい。中途採用、転職も一定程度いたほうが、年功序列、何年入社組というくくりもなくなる。また将来の景気変動に備え、少な目に採用しておくというのも不思議な慣習である。これもいったん正社員として採用すると、よほどのことがない限り途中で解雇できないという従来のルールがあるからである。かくして景気が回復しても新卒採用はそれほど増えず、狭き門のままである。若者は新卒時に正社員になれないと、もう一度正社員として採用されるのは難しく、まともな労働者として働く常識、マナーも身につかない可能性が高い。
新卒者を一括採用して企業の中で育てるのではなく、内外の大学や大学院やその他の教育機関が、職業人として必要な知識、スキル、マナーを教える役割をもっと担うということと合わせて、新卒一括採用を見直す必要があるのではなかろうか。そのためには10年、20年の任期付正社員あるいは契約正社員という、非正社員より一定の期間は雇用を保証され賃金も高い、新しい働き方も検討するべきであろう。
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