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2006-09-22 00:00
難民たちのジャパニーズ・ドリーム
四条秀雄
不動産業
7月12日付けの「CEACコラム」欄に掲載された井口泰教授の論説「外国人政策見直し:登録制度の再定義必要」に触発されて、日本の難民受入れ政策に関し私の考えを述べさせてもらいます。日本の外交は、日英同盟を結んだ明治の一時期を除いて、近攻外交か善隣外交のどちらかしかありませんでした。外交上の関心が、隣接する諸国に限定されているという特徴があります。日本にとって、米国、韓国、北朝鮮、中国、ロシア、ASEANが外交対象の全てです。人間の感覚の問題として仕方がないのかもしれませんが、これらの近隣諸国の多くは世界を視野にして外交を展開し、日本だけが善隣外交に徹してているのは余りにも対照的な姿だと思います。もっとも、こういう状況は中国が工作の行き届いた日本のマスコミを使って、行っているのかもしれません。靖国問題を騒ぎ立てるも、他のことを考えさせない点で、非常に優れた方法だと思います。
ともかく、日本には世界について関心を保つ人材が必要です。日本の学界やマスコミに期待したいのですが、過去の共産主義的運動の残滓や反米的感情を利用されて、どうも中国にコントロールされているようなので近い将来もどうにもならないように思えます。世界の情勢を知るには、日本の新聞の論調に頼るよりは、インターネットで検索して情報を構成しなおしたほうが遥かに見通しが良い結果が得られます。そこで考えるのは、日本ももっと難民を受け入れてはどうかということです。日本は人口が減少過程に入っているので、少しづつなら受入れが可能です。関心を持つべき地域の難民を受け入れれば、それらの難民は母国に関心を保ち続けますから、日本の議会が定期的に公聴会を開いて状況を聴聞すれば良いわけです。アメリカはもちろんイギリスやドイツも戦略的に重要な国から移民や難民を受け入れています。アフガンやミャンマーやチベットの難民を数万人規模づつ受け入れたら良いのではないかと思います。また、これをさらに拡張しEPA等を利用して、将来問題になりそうな地域から一定規模の外国人労働力を受け入れておいたら良いと思います。インドネシアや中央アジアやモンゴルから一定規模で受け入れておくべきだと思います。
よく知られた言葉に、アメリカン・ドリームという言葉がありますが、一般的にはこれは、「アメリカでの成功」という意味で使われます。そうするとジャパニーズ・ドリームとは「日本での成功」ということになります。しかし、私はこれは違うんじゃないかと思います。成功は、世界中どこにでもありますが、それにもかかわらず、アメリカン・ドリームに比するものは存在していません。これは、いったいどういうことでしょうか?以前にも書きましたが、アングロ・サクソン文化は、参入退出の自由度が高い点に特徴があります。それで私は、アメリカン・ドリームとは、「参入退出が自由なアメリカという場所での成功物語」と定義しなおしたいと思います。そうするとジャパニース・ドリームとは、「参入退出が自由な日本という場所での成功物語」ということになります。
もちろん米国は特殊な国なので、米国並みの参入退出の自由度は確保できませんが、そこに近づけることが日本の魅力を増し、日本への移動の波を生み出すでしょう。移動は成長の源泉です。時間は掛かるでしょうが、経済外交政策の基本がそこにあれば、日本経済の成長の強力な土台となるでしょう。優秀な外国人の人材は、一定規模の一般同国人がいる環境があってはじめてやってきます。これも結局は、同国人のコミュニティーが参入退出のコストを下げて、自由度を引き上げているからです。日本における日系ブラジル人の存在とそのコミュニティーの存在は、少しづつ優秀なブラジル人を引き付けるようになってきています。在日ブラジル人社会もかなりの経済規模になっているので、母国の芸能人が来日することも可能になっています。この経済の一部が教育関係に振向けられるようになると、大学教授なども来日滞在するようになるでしょう。
小中高校にALT(外国人英語教師)が数千人入ってきていますが、同様な外交政策としても有効な政策だと思いますし、日本政府もそういう副次的意図を考えてのことだろうと思います。しかし、ALTや留学生で高度人材を呼び込んでも、定着してもらうことは相当に大変でしょう。アングロ・サクソン的制度をどの程度まで日本文化のなかで消化できるか。それが他国人から広くジャパニース・ドリームとして認知されるか、それが経済・外交上、非常に重要ではないかと思われます。法務省には、どうも外国勢力の息のかかった連中が居るようで、中国、韓国以外の外国との関係を潰しまくっている。「日系人を特別扱いせず(定職、日本語習得が条件、在留更新で法務省)」という報道が流れたが、いずれ日系人は潰されるという予想どおりの方向に進んでいる。実習生・研修生制度の方が、外国人労働力の扱いとしてはるかに非人道的であるのに、こちらを実質的に緩和している。現在の流れでいくと、中国人が外国人労働者の中心として大量に入ってくる流れだ。戦前の台湾の経験でも中国人の単純労働者が入るととんでもないことになった。
日系人の母数は日本への大移動を起こすほど多くなく、在日日系人社会の規模はもうほぼ定常状態に達している。むしろ、日本での自然増の方が多くなってきている。失業率も日本人より低く3%という調査結果もある。共稼ぎでは世帯年収も600万近くなり、在日社会の経済規模も5000億円前後になるのではないか。日系人を特別扱いすることは、それでなくても同化しやすい日系人の関心を日本に向けさせる控えめな外交的・政治的効果がある。南米の幾つかの都市は、出稼ぎを前提にした経済構造が成立しているし、在日日系南米人社会で横のつながりが出来てきていることを軽視すべきではない。例えば、ボリビアのリベラルタという都市は、孤立したアマゾンの小都市だったが、最近ではボリビアの輸出の7%を稼ぎ出すようになったという。これは8000人近くいるという日系人と90年代以降の出稼ぎブームを抜きに考えることは不可能だ。目的の明確な機能的存在である物や企業の移転と異なって、人の移動は影響の度合いが確定しない。今、特別扱いを止めると、これらの地方の小都市で日系人を持ち上げて叩き落すような効果を与えて、恨みを買うことになる。
現在でも、日系のフジモリ大統領が登場したようなことと似た政治経済的に微妙な化学的な変化が続いている。それを見守るべきだ。思わぬ外交的資源になるかもしれない。在日の日系南米人社会の存在は、世界的にみてもユニークで価値があることを知ったほうがよい。アジアの社会に欧米系の社会が入り込むケースとしては、租界や居留地という形だったが、それとも違っている。そのため欧米の学者の中にはユニークな対象として研究を始めている人もいる。日系人は母数が多くない。これからも特別扱いを続けるべきだ。
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