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2013-10-09 00:00
国民主権のシリアのアサド大統領
川上 高司
拓殖大学教授
シリアでは化学兵器の廃棄作業が国連によって始まった。わずか1か月前には、地域戦争にも発展しかねない危機が世界を覆っていたとは思えない。だからといってシリアの内戦が終結する兆しは一向に見えない。シリアの反政府勢力には穏健派ではなくアルカイダと繋がるイスラム過激派組織が主導権をとりつつあり、内部対立が激化しているという報道も見られる。渦中のアサド大統領はどこへ向かおうとしているのか、ドイツのスピーゲル誌の10月7日付電子版に、同誌のインタビューに応じて、アサド大統領が胸の内を明かしている記事が掲載されている。
シリアでは2014年8月に大統領任期が終わる。次の選挙に、アサド大統領は出馬するのだろうか。アサド大統領は「いまはなんとも言えない。ただ、国民がノーといえば出馬しない」と、あくまで国民が決めることだと強調した。内戦が始まって欧米から辞任を迫られても一貫して彼は「2014年の選挙で国民が決めることだ」と、欧米の主張を跳ね返して譲らなかった。
アサド大統領は「私もたくさんの間違いをした」と率直に認める。「大統領だって人の子だ」ということばは、冷酷な独裁者のイメージとはほど遠い。そして国民主権と同じように「政権は化学兵器を使っていない」と強く否定する。国民にそんなことをするわけがない、欧米は我々よりアルカイダを信用しているんだなと皮肉も痛烈である。
内戦の終結に向けては、「戦闘グループとは話し合えない。話し合うのは政治的な組織だ」という。そして「ロシアは真の友人だ」と言いつつも反政府側との仲裁はドイツにお願いしたいと述べた。ドイツは反政府勢力に武器の支援はしていないので利害関係が薄い。しかもドイツはヨーロッパ経済を牛耳る立場にある。オバマ大統領もヨーロッパに関してはドイツの指導力を期待しているほどで、そのプレゼンスは高まっている。そのドイツに仲裁をしてほしいというアサド大統領のバランス感覚はさすがである。「外国の過激派勢力が内戦を激化させている」というアサド大統領の言葉が事実なら、シリア内戦はシリアだけでは解決しない。周辺国の協力が必要となる。周辺国の利害が複雑に絡み合う中でオバマ政権はどのような外交を展開するのか、しばらくは目が離せない。
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