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2013-10-03 00:00
大飯原発の停止と台風による人命被害
鈴木 馨祐
衆議院議員
9月15日で大飯原発が定期点検で停止し、再び主要国の中で日本でだけ原発が一基も稼働しない状況になりました。ちょうどそんなときに首都圏を直撃した台風。日本全国で大きな人的・物的な被害が出てしまいました。犠牲となられた方々、影響を受けられて苦しい思いをされている多くの方々の思いを考えれば、この様な被害を出さないための抜本的な対策を急がねばならないとの思いを新たにせざるを得ません。
それにしても、かつてこれほど人命が失われるような自然災害は頻発していたでしょうか。実はデータではここ数十年、大規模な風水害が急速に増え続けていることが示されています。明らかに温暖化・気候変動の結果、大気中の水蒸気量が増え気象のボラティリティーが世界中で増して、結果として多くの人命が失われているのが現実です。また、気候変動の結果として人類の生存に大きく関わる水・食糧・疫病等に関するリスクも急速に拡大してきています。私は何も原子力発電はリスクが小さく、温暖化・気候変動のリスクは極めて大きいと言うつもりはありません。しかし、温暖化・気候変動の人類の生存へのリスクは遥かに長期にわたる。対策を講じてからそれが実際に効果をもたらすまで数十年以上の時間がかかることも含めて我々はその現実を忘れるわけにはいきません。
一方、現状の科学技術の所与の前提のもとでは、原子力のリスクと温暖化のリスクは残念ながらトレードオフとなっている。そしてそのリスクを比較してほとんどの国で原子力発電を維持・推進しているというのもまた紛れもない事実です。福島原発で事故が起こったということ、そしてその対応策・避難プロセスのまずさから厳しい避難生活を強いられている多くの方々がおられるということについては、政治が責任をもって、全力で、最優先で対処せねばなりません。しかし、だからといって他のリスクとの比較を冷静にしないでいいということにはなりません。我々政治家が判断するにあたって考慮せねばならない最重要の価値観は、長期的に見て我々の生活、いのちに対するリスクを最も少なくするということです。
そのことを考えれば、原子力発電についてのリスクの冷静な検証がなかなかできないまま、経済活動を維持するという責務の中で、天然ガスの火力発電の拡大のみならず、さらに石炭発電の推進まで言い始めた我が国のエネルギー政策のあり方は極めて異常です。日本が誇る最新式の石炭発電設備ですら、Sox、NOxといった公害物質はほぼゼロに押さえるという画期的なものとなっていますが、CO2については、天然ガスの火力発電すら下回る効率でしかないというのが実態です。この石炭発電は一例にすぎず、様々な政策判断において、原子力発電のリスクと他のリスク(気候変動・経済等)の比較衡量をしないまま判断を下すというのは、あってはならないことであって、今後もその議論をきちんと冷静に進めてられるように引き続き努力していきたいと思います。
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