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2013-09-26 00:00
シリア情勢における外交の「舞台裏」
川上 高司
拓殖大学教授
9月5日、ロシアのペテルスブルクではG20が開かれていた。主要なテーマはシリア問題となった。なにしろ8月21日にシリア政府が化学兵器を使用したとしてアメリカがシリアへの軍事攻撃を検討していた最中だったのだ。アメリカを発つ前にオバマ大統領は、「プーチン大統領とは会談をしない」と発表して臨んだが結局現地では短時間ではあったが2者会談を行った。だがその結果はもの別れに終わったと報道された。
その時、両者の間で話し合われたことは、実は、シリアの化学兵器についてだった。シリアの化学兵器を放棄させる方向で一致したオバマとプーチンだったが、そのようなことはおくびにも出さす、あたかも決裂したかのような雰囲気を作ったことになる。これは、ラブロフ外相が14日、ジュネーブでケリー国務長官と共同会見を行った際に明らかにしたことだ。ラブロフ外相の言葉を借りれば「われわれの大統領が9月5日のG20の際にちょっとした会談を行ったが、その際に2人で定めた『シリアの化学兵器を国際管理下に置く』という目標が達成されたのである」。つまり、今回のシリア攻撃をめぐる最後のどんでん返しは既定路線だったというわけである。オバマ大統領の議会の承認が必要だというやや唐突な主張は、ロシアとシリアの交渉のための時間稼ぎだったのかもしれない。
オバマ大統領にすれば、シリアへの軍事攻撃は世界からの支持は得られず国内世論も反対、議会の承認が得られなければ今後3年間の任期は厳しいものになるはずだった。その崖っぷちから引き返すことができ、しかも外交によってシリアの化学兵器を放棄させることに成功したという得点までついた。一方プーチン大統領は、最後まで「国際法の枠組み」の遵守を貫くことで国際社会での信頼性を高め、おそらく地域に壊滅的結果を引き起こすであろうシリアへの軍事攻撃を止めることで存在感を強くアピールすることができた。同時にシリアやイランという同盟国との信頼関係もいっそう強固なものにした。
アサド大統領にとっても、化学兵器を放棄すればアメリカからの軍事介入は避けることができ今後も反政府勢力に対する優位を保つことができる。そしてロシアのさらに強固な支援を確保できたに違いない。まさに舞台裏の外交が見事な勝利を収めた今回のできごとは、国際関係を研究する者にとっては千載一遇の機会であった。
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