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2013-09-22 00:00
(連載)イプシロンを巡る諸問題(2)
鈴木 一人
北海道大学大学院法学研究科教授
将来の打ち上げ計画については、最終的に、このイプシロンがどのような意図や目的をもって開発されたのか、ということを考えると、搭載する衛星が日本国内で2機しかなく、将来的に海洋監視衛星を打ち上げるとしても、極めて限られた数しかない、ということは、このロケットに実績を与え、国際市場で競争させるという意図はあまり感じません。むしろ、イプシロンは、ISAS(JAXA宇宙科学研究所)がM-Vを失ってから、何とかISASのロケットを復活させたいと考えている人たちによって強くロビイングされ、文科省もそれを受けて開発していったものと見ています。また、それを支えた論理として「固体ロケット技術は将来のミサイル技術になりうるものだから、維持しなければならない」というものがあり、この論理で考えている政治家や産業界の方々によって支持されてきた結果であるともいえます。
確かに固体ロケット技術はミサイル技術に転用可能な技術ですので、将来、日本が弾道ミサイルを開発するという戦略的なビジョンがあるなら、そうした技術を保持することは大事だろうと思います。しかし、現在進んでいる憲法改正の議論においても、敵基地攻撃に弾道ミサイルを使うといったところまで議論が進んでおらず、先制攻撃の手段であり、また抑止の手段である弾道ミサイルの技術の維持という論理は、かなり危ういものがあると考えております。技術開発をしたいと願う人達が、こうした危うい論理をおもちゃにして固体ロケット開発をしているということであれば、ちょっと危険な火遊びのようにも思います。もちろん、これはあくまでも憶測ではありますが、全く根拠のない話ではないと考えています。
イプシロンの持つ、革新的な技術は、これからのロケット開発において、大変有用なものであり、これをどう生かしていくかということが今後の課題になると思います。しかし、上述したように、ミサイル技術としての性格を持つ固体ロケット技術を深化させていくとなると、無用な誤解を与える可能性もあり、ただでさえ、近隣諸国との関係がうまくいっていない現在、こうした無用な誤解が変な方向に発展する可能性もあります。それゆえ、きちんと政策的な意図をはっきり打ち出し、他国の懸念を払しょくする、ないしは、他国に懸念を抱かれないようにするための政治的なアクション(ジェスチャー)が必要だと思います。
これまで宇宙開発は、ややもすれば技術者の論理が優先し、そうした国際政治や安全保障の文脈が見過ごされてきた側面があると考えています。宇宙基本法が成立して、宇宙と外交、宇宙と安全保障のリンクが強まった現在、そうした側面からの分析、考慮というのも必要になると考えています。これはイプシロンの課題というよりは、今後の日本の宇宙政策の課題だと思っています。(おわり)
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