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2013-09-21 00:00
(連載)イプシロンを巡る諸問題(1)
鈴木 一人
北海道大学大学院法学研究科教授
さる9月14日に、国産ロケット、イプシロンが打ち上げれられました。イプシロンは、これまでのM-Vのコスト高を是正するという一点に集中して開発され、モバイル管制を含む、様々な革新的技術を実現するロケットとして、評価することはできます。
しかし、それは単なる技術面での評価であり、日本のロケット戦略、宇宙政策全体から見ると、果たして日本に固体ロケットが必要なのか、H-ⅡA/Bおよび新型基幹ロケットが開発される中で、日本にそれだけ多くのロケットを持つ必要があるのか、商業市場に参入するとしても、果たしてイプシロンが内之浦から打ち上げられることを前提にするとそうした商業的な競争力は射場設備も含めて十分なのか、さらにはミサイルと同等の技術であり、人工知能による打ち上げ管理など、極めて自律性の高い技術を導入する固体ロケットは、外国から見てミサイルの開発と疑われることはないのか、とりわけ中韓との関係が悪化している中で、また北朝鮮が核・ミサイル開発をしている中で、日本がイプシロンを今、この時期に打ち上げることが外国に対してどのようなメッセージとして伝わるか考えているのか、など、様々な点で疑問が残るロケットだと思っています。
そのため、個人的にはイプシロンは技術先行型の優秀なロケットではあるが、政策的にきちんと位置付けられておらず、むしろマイナスの側面もあるロケット、と評価しております。他国のロケットとの競争については、ドニエプルだけでなく、ロコットなどもあり、小型ロケット市場で勝負するのは難しいと思います。ドニエプルもロコットも元々はソ連のICBM技術の応用ないしは、ICBMそのものの流用であり、コスト面ではどう頑張っても太刀打ちできないところがあると思います。
また、小型ロケットの市場となると、科学衛星や安全保障に絡む偵察衛星などが中心となるかと思いますが、日本にはそれだけの数の科学衛星がなく、仮に、現在、開発を検討している海洋監視衛星をイプシロンで上げるとしても、十分な実績を積むほどのチャンスはないかもしれないと考えています。時折、イプシロン関係者からは、コストの削減による商業市場への参入、といったことが聞かれますが、きちんとした市場調査をした形跡もなく、どのくらいの需要を見込んでいるのか、ということも定かではありません。ですので、現時点ではロシアのロケットと勝負するのは難しい状況にあると考えています。(つづく)
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