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2013-08-24 00:00
(連載)新聞のブログ化について思う(2)
加藤 朗
桜美林大学教授
iPADではなぜか表現や論理が明快な産経のほうが読みやすい。他方iPADで朝日新聞の「天声人語」や日曜日の読書欄を読もうという気にならない。表現も論理も複雑、高尚で時に衒学的な「天声人語」や書評はネットに合わないようだ。「天声人語」の深い教養と知識に裏打ちされた内容をいったいどれほどの人が理解できるだろうか。わかりにくければ指でスワイプして読み飛ばす習慣がついたせいか、天声人語など2-3回スワイプして終わりということがほとんどだ。ネット配信の新聞は、紙媒体を単にネットに写し替えればそれで十分というわけではなさそうだ。ネットにあった内容の記事が求められるだろう。
ところで8月5日にワシントン・ポストがアマゾンに売却された。もはや紙媒体の新聞が生き残れないことを証明する出来事だ。ワシントン・ポストが経営に行き詰ったのは当然である。アメリカの新聞は街角の自販機か新聞スタンドで買うのが基本だ。日本のように宅配制度は発達していない。新聞販売の主力である自販機は昔と全く変わらず、コインしか受け付けない。30年以上も前ニューヨーク・タイムズは30セントだった。25セントと5セント、合わせて2枚の硬貨で買えた。現在ワシントン・ポストは、平日が1ドル25セント、日曜版が2ドル50セントだ。平日でも25セント硬貨が5枚、日曜日には10枚もいる。
現在、ほとんどのアメリカ人は1ドル程度の少額の買い物でもデビット・カードでするために、そもそも硬貨をふだんあまり持っていない。わざわざ新聞を買うために硬貨を持ち歩く人などいない。つまり誰も自販機で新聞を買わない。実際自販機で新聞を買う人を見たことは一度もない。最近では自販機もあまり見かけない。またiPADでワシントン・ポストもニューヨーク・タイムズも無料でたいていの記事は読める。しかも大事件はすぐにiPADに速報を流してくれる。いったい誰が小銭をかき集め自販機まで買いに行く不便をしてまで、紙の新聞を読みたいと思うだろうか。
紙媒体の新聞は早晩消える運命にある。いずれ新聞はすべてネットで読むことになるだろう。そのとき記事の書き方、編集など大きく変わるに違いない。新聞のブログ化はその予兆かもしれない。(おわり)
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