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2013-07-29 00:00
民主主義とは何かの本質を問うエジプトの政変
川上 高司
拓殖大学教授
アラブの春から2年が過ぎエジプトではモルシ政権に対する国民の不満が爆発、大規模な抗議行動となって退陣を要求していた。結局2年前と同じように軍が介入してモルシ大統領をその地位から追放し、暫定大統領として最高裁判事を任命した。エジプト軍は国民からの信頼が厚い。大統領拘束のため上空を飛ぶヘリコプターにタハリール広場に集まった人々は国旗や手を振り、政変が近いとタハリール広場は歓喜に包まれた。だがモルシ大統領が属するムスリム同胞団の支持者たちはこの政変に対して抗議行動を開始、7月8日には軍と衝突して50人を超える死者が出た。
この事態に支持者たちは一層の抵抗を全国的に呼びかけたため、さらなる混乱と流血が懸念されている。今回の政変をめぐっては、前回と違ってその正当性が問題となっている。軍部による軍事クーデターであり民主主義に対する大いなる挑戦であるとの見方がある。一方、これはクーデターではないと主張するのがノーベル平和賞受賞者で元IAEA事務局長のエルバラダイである。エルバラダイは、ドイツのスピーゲル誌のインタビューで、国民の気持ちはモルシ大統領の辞任で固まっていた、軍が介入しなければもっと悲惨なことになっていたのでこうするしかなかったし軍は政権をとる意志はないと政変の正当性を強調した。今回の軍の行動は民意を反映しているというのだ。
そして、アメリカもまた今回の政変を「クーデター」とは呼ばない。アメリカでは軍事クーデターを起こした国への支援を禁止している。エジプトの政変をクーデターと定義してしまえば、支援はできない。アメリカは支援を続けるためにはクーデターと認めるわけにはいかないのだ。オバマ大統領は国家安全保障会議で、エジプトの政変は「クーデター」ではないこと、エジプトへの支援は継続すること、いかなる派にもくみせず中立を保つことを確認した。この政変のつきつけた問題は深い。2006年、ブッシュ政権は当時ガザ地区を支配していたイスラム勢力のハマスに対して、総選挙を行い民主主義政権の確立を強く要求した。その要求にしたがってガザ地区では総選挙を実施、第1党としてハマスが選ばれた。だがその選挙結果にブッシュ政権は強く反発し、ハマスを正当な政権として認めなかった。
ユーロ危機の時には、イタリアのモンティ首相は選挙で選ばれたわけではなかったが首相に任命されて危機に対応した。このとき世界各国はモンティ首相の正当性については問わなかった。これらのことがつきつける疑問は、民主主義とは何なのかということだ。だからこそオバマ政権も対応に苦慮しているのであろう。民主主義とは何か。トマス・ジェファーソンやリンカーンの言葉を今一度、エジプトの政変に照らして考えるべきなのかも知れない。
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