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2013-07-22 00:00
デフレ脱却の安倍長期政権に基盤
杉浦 正章
政治評論家
3年間じっくりデフレの脱却と経済再生に取り組め、というのが参院選で自民党を圧勝させ、ねじれを解消した有権者の選択であり、期待であろう。首相・安倍晋三自身も7月21日「経済再生優先だ。経済力が国力の源泉であり、まず集中する」と言明している。秋の国会を「成長戦略実行国会」と位置づけ、アベノミクス定着に向けて、新たな成長戦略を推進する構えだ。また産業競争力強化法案の成立を目指す。一方で憲法改正は、長期戦で勢力結集を目指す構えとなる。原発再稼働に関しては、推進を掲げた自民党と、原発ゼロを主張する野党や朝日・TBSなど一部マスコミとの激突の様相だったが、昨年の総選挙に続いて、完膚なきまでに反対派が敗退した。衆参両院の圧勝により安倍は、病気にでもならない限り長期政権へのフリーパスを獲得したことになる。まず選挙結果を俯瞰すれば、国家の沈滞に大きく影響してきた衆参ねじれ現象の解消がようやく達成できた。近年のねじれは、1989年の橋本内閣で始まり、以来4半世紀にわたり頻発して、政治家も官僚も政策推進や政治改革の意欲を大きく減退させた。2007年の第1次安倍政権以降のねじれは、民主党が参院を活用して政権を倒し、揺さぶるという悪質な物に変ぼうした。参院発の政局と陰謀がまさに横行したのである。これが断ち切られたことは、安倍政権に果敢なる政策判断を可能にしたことを意味する。
選挙がアベノミクスの是非を選択した性格が濃厚であったことと合わせれば、安倍は次の総選挙までの経済での事実上のフリーハンドを得たことになる。いかにデフレからの脱却願望が国民の間に根強かったかを物語るものである。野党は戦後まれに見るほど弱体化して、再結集のめども立たず、当分“病気入院”状態となる。議席数を大観すると、自民公明両党で76議席と、非改選59議席を合わせてねじれを解消して、129の安定多数を上回る135議席を獲得したが、140の絶対安定多数を上回ることはできなかった。注目すべき点は、自民党が65議席と非改選の50議席と合わせて115議席となり、単独過半数122議席にあと7議席に接近したことである。これは、政策ごとの部分連合で特定の法案を成立させることも可能とする数字である。具体的には安倍が秋にも予定している集団的自衛権の保持を可能とする憲法解釈の変更とこれに関連する「国家安全保障基本法案」の通常国会での成立を可能とする。つまり公明党が「断固反対」しても、維新やみんなと組めば法案は成立できることになる。この選択肢の拡大の意義は大きく、連立政権における公明党の存在感は後退する。集団的自衛権をめぐる議論や駆け引きも秋から活発化する。
一方改憲に必要な162議席に達するには、改憲政党である自民、維新、みんなを合わせて非改選が61議席あることから、改選101議席の当選が必要となるが、合計で81議席であり、遠く及ばなかった。しかし公明党の20議席か、参院民主党内の20議席が改憲に回れば、可能となる。対応次第では衆院と同様参院でも3分の2議席も実現する方向となった。その際は民主党は分裂または分裂状態の危機に陥る可能性がある。安倍は早ければ秋の臨時国会で、改憲のための国民投票の年齢を18歳とする「国民投票法案」の成立を図り、改憲への一里塚としたい考えだ。同法案は当然ながら過半数で成立が可能だ。しかし改憲は「加憲」を主張する公明党との溝を埋めることは容易ではなく、調整には時間がかかるだろう。一方で安倍は民主党改憲派にも呼びかける姿勢だが、同党への工作は水面下に潜るから、まだ判明は不可能だ。自民党副総裁・高村正彦は21日「改憲は具体的な議論は生じても、息の長いものになる」と発言、一挙には進展しない見通しを明らかにした。当面の政治日程は、23日から環太平洋経済連携協定(TPP)交渉会合への日本初参加、25日から安倍の東アジア3か国歴訪、8月2日参院議長など院の構成の臨時国会召集、同月15日終戦記念日、同月下旬中東4か国訪問、9月5、6日ロシアでのG20首脳会議、下旬国連総会と内閣改造、10月上旬臨時国会と続く。
この中でまず安倍政権はTPPに待ったなしの対応を迫られる。農産品を中心に対日関税撤廃圧力との戦いとなり、厳しい政策判断を求められる。対中、対韓外交絡みで注目されるのは、8月15日の終戦記念日に首相、閣僚の靖国神社参拝が行われるかだ。安倍は21日「外交問題に発展することを念頭に、行くか行かないかは言わない」と態度を明確にしなかった。しかし、高村は「総理および閣僚が賢い判断をしていただけると思う」と発言、中韓との無用の摩擦を回避すべきとの立場を表明した。さらに注目されるのは、ロシアでのG20だ。中国国家主席・習近平も出席することから、正式会談は無理にしても、“立ち話し会談”または“二言三言会談”または“会釈”などが行われるかどうかだ。まさか両者とも顔を背けて擦れ違いでは、余りに知恵がない。内閣改造は長期政権への布石を敷く方向となり、選挙功労者の幹事長・石破茂は再任の可能性が高い。消費増税は4月~6月の経済指標を見て安倍が秋口にも最終判断する。安倍が消費増税法案の改正につながる同税見送りの決断をする可能性は低い。共産党の8議席が目立つが、都議選と同様に投票率が52.61%と低かったこと、民主党が受け皿にならなかったことなど、他動的要因が大きい。自民党の政策なら何でも反対するというアンチテーゼとしての存在が際立っただけであり、構造的な伸長をを意味するものではない。8議席が限界だろう。
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