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2013-07-18 00:00
壮大な引っ越しが始まったアフガニスタン
川上 高司
拓殖大学教授
アフガニスタンでは撤退に向けての準備が着々と進んでいる。全国に点在する米軍の最前線ポストが閉鎖され、近くの前線基地へと部隊が移動している。そのため主要な前線基地では居住人口が一気に2倍になったりして混雑している。しかも撤退を見越して最小限の供給しかないので物資も欠乏しがちである。さらに、これまでコントラクターが請け負っていた料理や洗濯、発電管理などの管理維持業務はコントラクターが引き揚げたため、自分達で行って基地を維持していかなくてはならなくなった。
戦闘業務に徹していた部隊兵士がいまでは助け合ってハウスキーピングに忙しい。それでも毎日のように大量の荷物がヘリコプターで運び出されていくのを見て彼らはいよいよ撤退だとの高揚感から多少の不便は気にならない。彼らはこのような前線基地からさらに大きな基地へと移動し帰国の途につく。人間の移動は身ひとつで可能だが、装備品はそうはいかない。10年間10万人の兵士が駐留していたため、その装備は膨大なものとなっている。車両だけでも35,000台、コンテナーに至っては95,000個もある。
これらを港湾のない内陸から無事搬出しなくてはならないのである。本来なら陸路でパキスタンのカラチまで運びカラチから船に詰め込むのだが、カラチに辿り着く道はカイバー峠を越える1本だけである。この峠はタリバンの拠点であるパキスタンとアフガニスタンの国境地帯にあり危険そのもので、現地の事情を考えれば遠回りでも空輸でいったんヨルダンやドバイへ運び、そこから船に積み込むほうが得策であると米軍は判断した。それは米軍がこれまで遭遇したことのない壮大な引っ越し業務となる。だが、空輸も簡単ではない。荷物が重い、重すぎるのである。4月にはアフガニスタンのバグラム空軍基地で民間機ボーイング747が墜落した。乗っていたのは旅客ではなく3台の戦闘車両と2台の地雷探知機で重量級の積み荷だった。重い積み荷は航空機の重心を狂わせる。この民間機も積み荷の位置が悪くて重心がずれて墜落したのではないかと言われている。
米軍はC-130などの輸送機はもちろんあらゆる民間機を総動員してこれらの積み荷を空輸しなくてはならないが、積み荷と航空機のタイプによって積み方が異なるため非常に緻密な計算が必要でそれはもはや「芸術の域」という。担当者は積み荷の量、固定する位置から固定の仕方まで綿密にプランを立てなくてはならない。間違えば大惨事となる。しかも、これまでなら輸送業務もコントラクターの補助があったが、彼らが撤退したためすべて空軍がやらなくてはならない。「1日24時間働いても終わりが見えない」状況で担当者らは「もはやFedEX状態」と自嘲気味である。この壮大な引っ越しにかかるコストは50億ドルから70億ドルと国防総省は見積もっている。引っ越しコストと荷物の多さにこの10年の戦争がなんだったのか、改めて考えさせられる。
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