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2013-07-13 00:00
アベノミクス真の課題はカネ・モノ循環の修復
田村 秀男
ジャーナリスト
米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は資産買い入れ規模を徐々に縮小させる方針を明らかにした。米金融政策の方向性が固まるのだから、前にも増して日本の「アベノミクス」の真価が問われる。そこで気になるのは「三本の矢」の有効性である。異次元金融緩和効果で円安・株高が演出されても、実体景気拡大にただちに結びつくとの確信はない。財政支出拡大効果の持続性にも疑問がつきまとう。成長戦略を含め、これら3本はばらばらに撃たれている印象をぬぐいきれない。なぜそうなるのか。
現代の市場経済というものは、フローとストックに分かれる。前者は実体経済活動で、国内総生産(GDP)で代表される。ストックとは金融資産のことだ。「小さな政府」と民間主導の現代経済は、金融資産市場を活発化させ、そこからあふれ出るマネーがモノやサービス、労働の市場に流れ込んで景気を拡大させるという循環で成り立つ。つまり株式を中心とする金融資産市場がにぎわえば、景気がよくなるはずである。金融資産バブル崩壊後には、中央銀行が大量の資金を発行して資産を買い上げ、市場を安定化させ株式などの相場を上昇させるのは極めて理にかなっている。FRBが取ってきた3度にわたる量的緩和(QE)政策とは、まさにフローとストック、実体経済と資産経済の連環に着目したわけで、その成果にバーナンキ議長が自信を深めている。
日本の場合、実は上記のような連環が「15年デフレ」の間にずたずたになってしまった。慢性デフレが始まった1998~2012年度までの日本の家計金融資産はリーマン・ショック後の落ち込みを除けば、デフレとは無関係に拡大を続け、今年3月末には15年前に比べて284兆円増えたが、名目GDPは47兆円減った。中でも現預金はリーマンの影響が軽微で一貫して膨張を続け、154兆円増えた。企業部門もこの間に現預金を56兆円増やした。GDPと家計や企業の金融資産の推移をグラフにすると全く逆の方向の曲線を描いている。同じ比較を米国のGDPと金融資産でみると、見事なまでに並行して共に増え続けている。
日本の最優先課題は、壊れてしまったフローとストックの接続チャンネルの修復だ。金融緩和を通じて円安・株高傾向を長期持続させるのは前提条件だが、民間の役割が重大になる。企業は高株価を利用して低コストの長期資金を確保し、実物投資を増やす。新興ビジネスの新規株式上場を促す。銀行は集まる預金を企業向けや住宅関連融資に振り向ける。政府の方ではまず、企業の設備投資を国内に誘引する法人減税が欠かせない。戦略特区もストックの市場からあふれ出てくる資金の受け皿と位置づける。政府・日銀と民間は以上の観点に立って結束し、アベノミクス諸策を再整理し、統合してはどうか。
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