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2013-07-05 00:00
(連載)株価乱高下には規則がある(2)
田村 秀男
ジャーナリスト
投機に翻弄される日本の株式市場の弱さは、とどのつまりグローバルな金融市場での円が基軸通貨ドルに従属するローカル通貨の地位にあることに起因する。日本株はウォール街にとってローカル通貨建ての金融商品に過ぎない。ウォール街の投資ファンドはグローバルな資産運用をドル建てで組んでいる。かれらの帳簿上、日本株の運用比率は一定期間、同一に保たれる。
一番大きな運用シェアを占める米国株が上がれば、日本株の保有比率が下がるので、かれらの自動売買プログラムが日本株買いを指令する。ドル安・円高となると、日本株のドル換算価格が上がるので、日本株は売られる。逆に円安となれば日本株買いとなる。ヘッジファンドはこの方程式を踏み台にして投機にいそしむ。投機筋にとって日本国債は絶好のもうけの道具である。円高が進むと見れば日本株を売って国債に換え、円安を見込むと日本株を買い戻す。黒田日銀が異次元金融緩和を打ち出す前に日本国債は投機筋によって大量に買われ、国債利回りが急低下(国債相場は急上昇)したが、4月4日に実際に異次元緩和が打ち出された途端、投機筋は利益確定のために国債を一斉に売ったので国債利回りは急上昇(国債相場は急落)した。
しかし、国債を売却した資金は株に向かい株価は上がりつづけたが、円安が円高に転じた5月23日に株は急落した。「円高=日本株売り」の自動売買プログラムが一挙にフル回転し、ウォール街の日本株投資ファンドはそれまでの日本国債売りでもうけた資金で買った日本株を一斉に売却して利益を荒稼ぎしたのである。日本の株式と国債を中心とする金融市場が世界の金融センター、ウォール街に支配される現実は、ドル基軸通貨体制のもとでは短期間では変えようがない。ドル基軸体制は2008年9月のリーマン・ショックで揺らぎ、没落すると多くの識者からみられたが、危機にさらされたのはドルを追撃するはずのユーロだった。
米国連邦準備制度理事会(FRB)はさっさとドルを大量に増刷してウォール街に流し込んで、住宅ローン担保証券、国債そして株式市場を安定させ、ドル金融市場を焼け太りさせた。日本の投資家にとって重要なことは、短期的な売買に動じないことである。短期売買にあわてふためいて後追いしても、投機勢力にもみくちゃにされるだけである。(おわり)
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