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2013-06-24 00:00
デフレ圧力下の消費増税は必ず失敗する
田村 秀男
ジャーナリスト
来年4月の消費税率引き上げに予定通り踏み切るべきかどうか、安倍晋三首相の周辺では議論が分かれている。「予定通りの実行」派と、少なくとも1年は実施を延期し2015年以降に一挙に10%に引き上げればよい、とする向きに二分されている。「延期派」は、アベノミクスによってせっかく脱デフレと景気の本格回復の道筋が見え始めたのに、増税すれば、個人消費が冷え込み、デフレ圧力を招き入れてしまうと恐れる。産経新聞コラムなどで2カ月以上前から「消費増税はアベノミクスを潰す」と警告してきた筆者に同調する。
「このまま増税」とする首相周辺も景気やアベノミクス効果への悪影響を懸念しながらも、「政治的には延期は無理」と打ち明ける。増税延期ともなれば、自民党内の増税推進派が騒ぎ出し、党内の結束が乱れ、ひいては安倍首相の党内基盤が弱くなるというわけである。何が何でも増税をめざす財務省の幹部は「増税延期となると、日本が財政再建に消極的と海外の投資家から不信を買い、国債相場が暴落しかねない」と説得に躍起となっている。増税推進派議員やメディアの多数はこの論理を真に受けているので、始末が悪い。
消費増税すれば財政再建の道筋が見えるのだろうか。筆者は以前からデフレ圧力が根強い中での消費増税はデフレの進行を加速し、経済のパイを萎縮させ、現役世代を苦しめるばかりか、消費税、所得税、法人税の基幹税収総額を減らす結果、財政収支が悪化すると指摘してきた。1997年度の消費税率引き上げ(3%から5%)の後に起きたのが「15年デフレ」と税収の大幅減だった。筆者の指摘については、浜田宏一内閣参与(エール大学教授)も同意する見解を何度も明らかにしている。財務官僚の意のままに消費増税を推奨してきた御用学者の多くはこの事実を無視するばかりか、消費増税のデフレ効果、税収減効果を直視しようともしない。メディアは当然のごとく御用学者に追随する。
英国は11年1月から付加価値税(消費税に相当)率を17・5%から20%に引き上げたが、一挙にデフレ圧力が高まった。12年夏にはロンドン五輪が開かれたが、消費は減退したままだ。消費者物価は増税に伴い11年に4%台、12年からは2%台で推移しているが、名目国内総生産(GDP)の伸び率を上回り、11年以降は実質マイナス成長に陥った。所得税と法人税などを含む税収総額は12年9月以降前年比マイナスに落ち込んだ。ことしはさらに悪化し所得税、法人税収とも前年比減、付加価値税収も実質では前年比減収である。発券銀行のイングランド銀行はあわてて資金発行量(マネタリーベース)を猛烈な勢いで増やしているが、この量的緩和の効き目は消し飛んだ。増税派は英国の惨状を直視すべきだ。
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