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2013-06-21 00:00
シリアの内戦はヨーロッパを分裂させる
川上 高司
拓殖大学教授
5月27日、EUでは12時間に及ぶ会議が開かれ、シリアの反政府勢力に武器の供与を認めると決議した。ヨーロッパでは武器の禁輸措置がとられていてその期限が5月31日で切れる。そのため禁輸措置を延長するか終わらせるかの議論が続いていた。禁輸措置の終了を強く推進していたのがイギリスとフランスだった。反政府勢力を支援しないと政府軍に太刀打ちできないという理由から強硬に禁輸措置の廃棄を求めていた。
特に鼻息が荒いのはイギリスで、今回の解禁決議には大満足し「ヨーロッパの合意だ」と胸を張る。だが「合意に失敗した結果」と悲嘆にくれている国もある。悲嘆にくれているのは、禁輸措置の延長を求めていたスェーデンやフィンランドなどの北欧諸国、チェコ、オーストリアやドイツ、オランダだった。特にオーストリアは強硬派で、EUが武器の供与を認めるならゴラン高原に駐留している国連監視軍から自国兵士をすべて引き揚げるとまで言い切る。もしヨーロッパが武器支援をしたらオーストリア兵が報復のターゲットとなるし監視軍の中立性も損なわれる、というのがその理由である。
ドイツはそもそも兵器の輸出には厳しい制限がかけられているため、解禁になったところでうまみはない。むしろ政治的な負担ばかりを背負うことになることは目に見えている。だから武器の解禁には乗り気ではない。ヨーロッパにはすでにシリア難民が2万人押し寄せている。それ以前からも中東からの移民が多くなってきていることを考えると、中東での紛争に介入することは、自国の治安や社会問題に跳ね返ってくるのである。そして「武器の供給をしたら内戦はもっと熾烈になり犠牲者や難民が増えるだけだ」と解禁反対派は危惧する。
そしてもう一人、解禁を強く懸念しているのがイスラエルのネタニヤフ首相だ。武器の供与が始まれば戦闘はエスカレートし、イスラエル周辺も脅かされる可能性がある。イギリスは解禁になったからといってすぐに輸出するわけではないと釈明しているが、ヨーロッパ諸国はいまでは6月の国際会議に望みを託している。シリア問題は、地続きのヨーロッパにとっては他人ごとではないのである。
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