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2013-06-19 00:00
(連載)日本は米中関係に楔を打つ以外ない(2)
加藤 朗
桜美林大学教授
しかし、シリア情勢やイランの核開発など中東情勢が次第に緊迫し始め、今後は再び中東に回帰することになるだろう。そのためには中国と協力してアジア太平洋の安定を確保する必要がある。かつては日米同盟こそアジア太平洋に不可欠と言われたが、今回の首脳会談でオバマは「米中関係は両国の繁栄と安全保障だけでなく、アジア太平洋と世界全体にとっても重要だ」と述べている。日米関係よりも米中関係が重視される時代になってきている。
振り返ってみるとオバマ政権になってから外交政策で見るべき成果は上がっていない。核兵器のない世界の演説で世界を熱狂させ、核兵器のない世界が実現する前にノーベル平和賞を授賞してしまった。ノーベル平和賞をとって歴史に名を残せたので十分と言わんばかりに外交に身が入らない。そこに中国が台頭し、なりふり構わぬ膨張政策を展開している。オバマ政権は防戦一方である。心理的にはアメリカはもはや負け戦を戦っているようだ。
その何よりの証拠が、尖閣問題である。アメリカが尖閣問題に巻き込まれるのを嫌がっている事自体、同盟国としての責任放棄である。尖閣諸島の施政権を日本に返還する決定を下した(日本にとっては当然だが)のはアメリカである。尖閣問題をめぐっては、決してアメリカは第三者ではない。日本は必ず尖閣問題にアメリカを巻き込まなければならない。さもなければ学界で話題のオフショアー・バランシングなる戦略で日本は見捨てられる。ゲイツ元国防長官はオフショアー・バランシングをアメリカの次の大戦略などともてはやしているが、オフショアー・バランシングは19世紀のイギリスの戦略の焼き直しに過ぎない。オフショアー・バランシングが議論されること自体、アメリカがすでにイギリスと同じ島国になっている証拠だ。
島国のアメリカにはトルーマン・ドクトリンに匹敵するような世界像を描ける指導者、学者がいない。仮にオバマ政権が世界像を描いたとして、もしそれがG2の米中共同覇権で太平洋分割なら、戦後日本外交の最大のトラウマ「朝海の悪夢」が正夢になる。その結果、日本は中国の属国になるか、歴史が繰り返され米中との対立に追い込まれるか。米中関係に楔を打つ以外、日本は生き残ることはできない。(おわり)
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