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2013-06-15 00:00
(連載)今北朝鮮を動かしているのは誰なのか(2)
李 相哲
大学教員
この点が、金正日政権と金正恩政権の決定的な違いである。金正日は、大小案件を独断で決めた。意見を聞く場合も議論は許さず、一人ひとりを呼びつけて聞いた。この変化は何を意味するのか。金正恩は自分の意思で何かを決定していると錯覚を覚えているのかもしれないが、結局、下の人間たちの考えを肯定、あるいは否定する役に回っていることを意味する。いくら、統制のきく北朝鮮といっても、二人以上の人間があつまり、議論を交わすと意見の相違が生じる。北朝鮮では、第3回目の核実験をめぐって激しい議論を交わされたと伝えられている。経験の浅い金正恩にとって、国内問題はともかくとして国際問題をどう処理すべきかの判断がつかない事柄は多い。そのときどうすればよいか、迷ったとき、よき相談相手がいれば、政権はそれなりに機能する。
昨年の8月まで、その相談相手はおじの張成沢であった。昨年8月までの金正恩の動きを観察してみると、金正恩の現地視察に一番多く同行したのが張成沢であったという事実は報道で確認できる。百数十回の現地視察に、張が100回以上同行している。問題は8月以降である。彼の成長過程を観察したという金正日の料理人の手記を読むかぎり、彼はとても自尊心のつよい子供であったことがわかる。彼の性格上、いつも張成沢の話に耳を傾けることは権威を傷つけることだとおもうようになったとしても不思議ではない。それに、万民が崇拝、ちやほやされている正恩が、錯覚に落ちたとしても不思議はない。「僕だってできる」という自信が蘇えたのだろう。昨年8月以降、北朝鮮が強硬路線に回帰、荒っぽい振る舞いが目立つようになったことは、よき相談相手の張が明哲保身を図って、一歩さがっているか、あきれて、黙っているからだろう。その隙をついて忠臣を自称する悪い取り巻きが、正恩を唆したというのが真相ではないか。
いずれにせよ、現在の政策決定プロセス、政権運営の仕方が抱えている問題は3点に集約することができる。まず、政策決定過程に意見の対立もありうることだ。現段階では、政権内の結束が既得権益者らの利益と一致するからそれが決定的な軋轢にまでは発展しないが、その権益を守れなくなったときは、危なくなる。核兵器を含む武力の増強と経済建設を並行して行うという「併進路線」はこれから大きな議論を呼ぶだろう。これが金正恩政権のアキレス腱になるだろう。つぎに、力の中心が「正解」を出す勢力、人間に動く可能性が高い。金正恩の判断に強い影響力を及ぼす人間が権力を握り、それに権益を求めてパワーエリートが集まる可能性もある。それら人間が派閥をつくると、金正恩政権の命とりにつながるかもしれない。張成沢が敬遠され、口を噤んでいるとすれば、金正恩、もしくは叔母の金敬姫がその危険性に気づき、張を警戒し始めているという証でもある。
最後に、金正恩が最高指導者であることは間違いないが、リーダシップを発揮できずにいるということでもある。自分で考え物事を決めるというより、誰かの意見に同意するだける人間になっている。将に裸の王様となりつつあるかもしれない。いずれにせよ、金正恩政権は、正常に機能しているとは思えない。すなわち、リーダはリーダとして、また、パワーエリートたち、各部署は応分の責任を果たしているというより、金正恩の気分で動いているのだろう。そこで、政策の失敗、不思議な振る舞いが目立っているのではないか。(おわり)
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