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2013-05-31 00:00
シリア情勢の鍵を握るのは米露関係
川上 高司
拓殖大学教授
5月5日、イスラエルがシリア国内を空爆したがこれはレバノンに拠点をおくイスラム組織ヒズボラへ武器を供給する補給車列を狙ったものだった。この空爆に対してシリアは報復も辞さないほどに激怒し、シリア内戦が地域戦争へと拡大することが懸念された。幸いシリアの報復は現時点では行われず、シリア内戦はどうにか内戦に留まっている。一方で12日、シリアとの国境付近のトルコの都市で爆弾テロが起こり40人以上が犠牲になった。このテロはシリアが関与しているとトルコ政府は疑っており両国の緊張が高まりつつある。シリアを巡る緊張関係にオバマ政権はロシアとともに国際会議の開催を提唱し世界に呼びかけるなど、活発かつ迅速な対応をしている。
だがアメリカの国民は大統領ほどにシリアには関心がないことが、ピュー・リサーチ・センターの世論調査で判明した。調査によるとシリア問題に関心をもっているのは18%にとどまっている。最近の国民の関心はボストンテロに63%、銃規制問題に39%、経済問題に35%と国内問題に集中している。ちなみにアメリカ史上最も長い戦争であるアフガニスタン戦争に関心があるのは16%で、もはやアメリカ国民にとって中東は遥かなる土地となっているようである。その一方で国民は軍事介入には前向きである。昨年末の世論調査ではシリアへの軍事介入を支持するのは27%とかなり低く国民の「戦争疲れ」が顕著だった。だが、シリア政府が化学兵器を使用したという疑惑が持ち上がると、シリアが化学兵器を使用した場合には軍事介入に賛成する国民が45%に上昇している点は要注意であろう。
かつてブッシュ政権はイラクのフセインが生物化学兵器を所持していると主張して国民の支持を集めることに成功した。シリアで化学兵器が使用されたとオバマ政権が認めれば、世論は一気に軍事介入へと傾く可能性は高い。世論が強くなれば、オバマ大統領も軍事介入を考慮しなければならなくなるだろう。だが、介入した後の事態をどう収拾するのか、そのビジョンがない介入はまさにイラクの二の舞であるし、シリアの内戦が複雑であるゆえに国境を越えて紛争が拡大する可能性は高い。
シリア国内で台頭してきたアルカイダ系の過激派組織とシーア派過激派であるヒズボラとの緊張が高まりつつあり、イスラエルとシリア、トルコとシリアとの緊張も上昇中である。この厳しい状況に鍵を握るのは実はロシアで、ロシアとアメリカの協力がどこまでできるのか、つまり米露関係にシリアの情勢はかかっている。その意味で両国が提唱した国際会議の意義は大きいのである。
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