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2013-05-27 00:00
ロシアンピボット:ロシアのアジア戦略
川上 高司
拓殖大学教授
4月16日、オバマ大統領の国家安全保障担当補佐官のトム・ドニロンがオバマ大統領の親書を携えてロシアを訪問した。プーチン大統領はドニロンと会談し、米露の経済的な協力関係の強化が最優先事項だと述べたという。親書には、貿易や経済分野でのアメリカの提言やミサイル防衛、核問題、軍事的政治的問題の解決について記してあったという。もちろん、目前の緊急課題として北朝鮮問題やシリアの内戦、イランの核開発問題、アフガニスタン問題、中東問題などで米露で協力していくことが記されているに違いない。ミサイル防衛問題に関しては4月23日にはNATO評議会とロシアは会談が予定されているので、ドニロンの訪露はその地ならしという意味あいが強い。
ロシアとしては、このようなアメリカの率直な対話路線は歓迎するところである。プーチン大統領も経済的な協力関係には積極的で、前向きな姿勢をドニロンに伝えたようである。ロシアは、西はヨーロッパに接し南は中央アジアやイスラム諸国とも近い。東は中国や朝鮮半島や日本、アメリカとも国境を接しておりその地政学的な重要性は高い。歴史的政治的にも周辺諸国との関係や影響力は強く、アメリカとロシアが協力するようになれば多くの国際的問題に解決の兆しが見えるようになるに違いない。
そのような地政学的、軍事的、経済的な影響力を持つロシアは戦略的機軸をアジアに移すべきだと、インドに拠点を置く「南アジア分析グループ(South Asia Analysis Group:SAAG)」が提唱している。SAAGによればロシアはシベリア開発や天然資源を中心に経済的には中国や日本などへと軸足を移している。今後は軍事的な機軸もアジアへと移して米露が協力関係を構築していくべきだというのだ。冷戦時代は米ソの対立の中アメリカは中国に接近してバランスを取ろうとした。今冷戦は終わり、アメリカは対中国へのバランサーとしてのロシアと関係を深め中国をヘッジするにはロシアは理想的だというのがSAAGの主張である。だがそれにはヨーロッパとのミサイル防衛問題が解決することが先決だろう。西側の脅威が低くなればロシアは東へとPIVOTを移すことができるのだ。
ロシアと中国は天然資源やBRICSとしてあるいは中央アジアを含む上海機構を通して協力関係を構築している。表面上は良きパートナーのようではあるが、その根底には根深い相互不信感が横たわっており、決して真の同盟国とはならない。ロシアが機軸をアジアに移してアメリカとの関係を強化すれば中国への牽制となり、地域の安定にも繋がる可能性は高い。ロシアは中国とともに新興国として共通の利益を追い、一方で中国への牽制としてアメリカとは政治的な面で協力関係を構築していく。さらにアジアだけでなくアメリカとも経済関係を強めていく。プーチン大統領の外交政策は多層で多面である。
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