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2006-09-04 00:00
我が国資源外交における対中関係の視点
小宮山健二
元教員
9月1日の河東哲夫氏の投稿「ユーラシアには『複眼的』外交を」は我が国にとっての中央アジアの戦略的地位につき解説する優れた論説であったが、私は「我が国資源外交における対中関係の視点」から考察してみたい。
中国は、2桁台の経済成長を持続することを目標に、その為に必要不可欠な、エネルギー資源、その他鉱物資源の確保に躍起になっている。それは、日本の主張しているEEZラインにギリギリの海域でガス田開発を行っている事実や、イランやリビアでの原油採掘権の獲得、カザフスタンとの間で石油パイプラインの敷設の取り決めや、将来の原油不足、高騰を見越して世界2位の埋蔵量を誇るとされる同国のウラン鉱山の共同開発等からも伺われるところである。そうした中国の動きは昨今の原油価格の高騰の一因にもなっている。
日本は東アジア共同体の見地からすれば、本来、中国のような大エネルギー消費国家と、協調し、エネルギー資源の開発や、省エネ技術の供与等で、共同歩調をとることが望ましい。ただし、問題は、エネルギーや資源の問題と言うのは、経済的な問題に留まらず、安全保障の問題に直結するいう事実である。例えば、日本が自国EEZ内でのエネルギー資源の開発を行っていないのは、その存在を知らないからでも、経済的な理由からでもなく、現在はエネルギー資源のほぼ100%を海外からの輸入に頼っている現状を踏まえ、輸入が不可能になるような事態に備えての、天然の備蓄の為であると考えている。それは、大量のエネルギー資源を埋蔵するアメリカも採っている政策であり、アメリカも有事に備えて、国内のエネルギー採掘を大幅に制限しており、国内生産分は、全エネルギー消費の1/3以下に留めるようにしていると言われている。
そこに来ると、中国のエネルギー生産や、使用に関する安全保障上の見地は大きく異なるように思われる。本来ならば、中国も自国のエネルギー生産量を抑えて行きたいと考えるのだろうが、他面、最低でも7%前後の成長を2020年まで持続し、経済国家としても、世界トップクラスの地位に到達しなければならないという目標を抱えている(おおまかに言って、現在のGDPの4倍が目標。因みに、2001-2005年度は平均で9.5%の成長)。それは、当面、エネルギー問題や環境問題を蔑ろにしても到達しなければならない至上命題となっているように見える。中国国内に蔓延している経済力の地域格差や、元々抱えている民族間、文化間、宗教間の問題も相俟って、それは単なる努力目標には留まらず、中国中央による中国の統一を維持しうる為に今後とも必要とされる最低限の経済発展なのだと考えている可能性も低くない。
上に述べたとおり東アジア共同体の精神や、経済的なコスト・メリットを追求するのであれば、中国のような巨大エネルギー消費大国と、共同でエネルギー開発や環境問題対策を日本が行って行ければ、両国にとってのメリットは大変大きい。ただし、現状では、共同開発をしたとしてもその成果を両国で享受しうるかどうか、現在の中国のおかれている立場や、安全保障政策を考えれば疑問が残る。現状を考えると中国はエネルギー資源の争奪戦を巡っては日本のライバルでしかない。
そう考えると、任期の最後とは言え小泉首相が、エネルギー問題への深い関心を窺わせ、中央アジアを訪問したことは大変有意義であったと考える。
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