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2013-05-20 00:00
中国の教養市民層の形成に期待する
若林 洋介
学習塾経営
最近の中国の目覚しい経済成長の中で、注目すべきは都市人口が農村人口をやや上回りつつあることと、それに伴って教育水準が向上し、大学生の数も増大しているという点である。こういう富裕層(ブルジョアジー)の増大に伴って、国民の知識欲も増大し、知識階級(教養市民層)というものが形成されていく。ただ中国は、共産党の一党独裁体制であり、言論・出版の自由、結社の自由などが著しく制限されている。とはいえ、中国アマゾン書店の出版物(簡体字版)を見てみると、出版の自由は思ったより認められているようで、そのことに驚いた。
日本の作家では村上春樹が人気作家のようであるが、そのほかにも司馬遼太郎なども読まれており、山岡宗八の『徳川家康』も一時ブームとなった。経済人では渋沢栄一の『論語と算盤』や松下幸之助、稲盛和夫、本田宗一郎の経営論集などがよく読まれているようだ。また日本の近代化にも大きな関心があり、福沢諭吉の『文明論の概略』『学問のススメ』なども出版されている。またJ・S・ミルの『自由論』も出版されているのには正直ビックリした。さらには西田幾多郎の『善の研究』、鈴木大拙の『無心ということ』、梅原猛の仏教論なども、中国語に訳されて、読者を獲得している。おそらくは中国の大学生の方が、日本の大学生よりも知識欲が旺盛で勉強熱心なのではないか。
こういう教養書を読む知識階級が生まれて来るということは、自らの頭で自主的に物事を考える人々が増大して来ることを意味している。そうなるとそのような教養をベースにした対話ということが可能となって来る。これからは日中両国の課題として、日中両国の知識階級の対話、および大学の交流などを通じて、科学技術系だけではなく、人文的教養の分野でも共通ベースを作っていくことが重要である。かつては岩波文庫をはじめとする古典的教養、岩波新書・中公新書などの啓蒙書といった、安価で学生向けの出版文化が、日本の教養市民層の形成に大きな役割を果たしてきたが、これからは、日中両国の大学人・出版界が共同して、日中両国の教養市民層の形成に尽力する時代が来たのではないか。「中国には、言論・出版の自由がないから、そんなことは夢物語にすぎない」という反応が返って来そうであるが、そのようなことを言う前に、中国アマゾン書店の出版リストをまずしっかり調査してから反論していただきたい。
私自身が昔読んだ世界文学全集の作品などもほとんど翻訳・出版されており、作家という職業も成り立つ段階に来ている。中国人と言えば、抗日戦争ドラマばかり見ているようにも思われるが、自主的にものごとを考える教養市民層が生まれつつあることを見逃すべきではない。また文明論的に言えば、長年の中国の支配階級は、科挙試験に合格した文人が中心の国柄であった。
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