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2013-05-18 00:00
(連載)尖閣摩擦は世界のflush point(1)
坂本 正弘
日本国際フォーラム客員上席研究員
2013年年4月上旬、訪米しサンフランシスコで米国際関係学総会(ISA)出席後、ワシントンで米有識者と会談したが、尖閣問題が今や極めて可能性の高い世界の発火点(flush point)だとの指摘が相次いだ。5月上旬、カーネギー財団は400ページ超の報告書「2030年への中国の軍事力と日米同盟」で、尖閣を契機とする日中軍事衝突の可能性を繰り返し指摘した。その後、米国防省も中国軍事力年次報告で、中国の尖閣政策を批判したが、中国も国防報告で日本を名指しで非難した。今や、国際世論は尖閣を巡る日中摩擦を、発火の可能性の高い事態と認識しているのである。
ISA学会は米学会だが、4日間、1,000を超えるパネルが開催され、参加者は1万人に迫り、事実上、世界の国際政治学会である。その時点の重要な国際問題を議論できる点で、世界の潮流を見る貴重な機会である。故佐藤英夫筑波大教授に勧誘され、以来20年になる。近年の憂慮は日本の存在感の希薄化だったが、今年は、随所に、日中関係が取り上げられ、シカゴ大のMeasheimer 教授やNye教授も日中、尖閣問題を論じた。日中紛争の文脈は、アジアは21世紀世界のフロンテイアだが、アジア諸国の不均等発展はパワー・バランスを変えた。日本は明治以来のアジア代表だったが、今や、急激に大国化した中国が登場し、両者が新しい環境に慣れる過程で衝突の可能性が高いというのである。但しISAでの中国の評価は高くなかった。リーマンショック後の中国は4兆元の財政出動で世界経済を支え、中国モデルの期待は高まり、G2体制の評も出た。しかし、2009頃からの外交の高姿勢に加えて、自己利益追求の大国主義、貿易や資源投資に関し、新帝国主義の批判も出ており、G2体制の言及はない。
カーネーギー財団報告書は、Swaine上席研究員、モチズキ教授などの協調だが、第1に、2030年までに米中日間に全面戦争はない。中国軍事力は大幅に増強するが、なお、米国に優位あり、更に、中国は中進国の罠を脱する上で、世界との経済交流・平和を必要とする。第2に、その上で幾つかのシナリオがある。 ①中国のA2/AD能力増強に対し、米財政の制約が強いと、西太平洋の中国と日米の軍事バランスは接近し、場合によっては、限定・小規模な衝突もあり得る。②他方、中国は社会不安が高まると、国内問題に忙殺され、対外外交は軟化し、軍事緊張は緩む。③但し、いずれの場合でも、日中間の軍事バランスは中国に有利になり、日本に領土問題などで譲歩を強いる状況が出る。また、国内不安を抱える場合でも、政権の人気維持に反日感情を利用し、実力行使を含む強硬姿勢は可能である。尖閣題での、中国の妥協的動きは当面期待できず、両国の高い緊張が続く。
以上から、報告書は日本は防衛体制の抜本的改革と防衛力増強が必要だが、米国との役割分担を綿密に協議し、密接な軍事協力を行う方が有効だとする。米国は太平洋という「距離の敵」を克服する上で、日本同盟は必須だが、韓、豪、アセアン、印との関係を強化し、米兵力の分散と統合を目指している。(つづく)
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