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2013-05-14 00:00
憲政の常道に反する「衆参同日選挙」はありえない
杉浦正章
政治評論家
ばかばかしいから「衆参同日選挙」説など書かないでいたら、最近「どうなるんですか」と問い合わせが殺到しだした。筆者が政界で最初に「同日選挙」説を紹介したのは4月18日で、そのときは「97.5%ない」と断定したが、今回はそれに1%付け加えて「98.5%ない」と断定しておこう。動物的直感による“空想科学的な根拠”からの判断であるが、筆者の解散への直感はこれまで半世紀外れたことがない。ここで度胸と勘の勝負をしておく。週刊誌や駆け出し政治記者達が「ダブルだダブルだ」と騒ぐが、首相・安倍晋三による解散の断行は憲政の常道に反することを知らない。あまりにも党利党略過剰の解散をしては、“解散様”に申し訳が立たないのだ。解散に一番大切な“大義”が成り立たないのだ。なぜなら昨年末に解散・総選挙が断行されたばかりであり、まだ1年も経過しないうちに伝家の宝刀を抜くには、よほどの理由がなければならない。
過去に解散から解散までの期間が1年以内の総選挙は2回ある。吉田茂のバカヤロー解散と大平正芳のハプニング解散だ。吉田は1952年8月の抜き打ち解散のあと、翌年3月にバカヤロー解散をしている。戦争直後に社会主義革命を目指す社会党などがめちゃくちゃな要求を繰り返し、吉田を追い込んだ結果であり、堪忍袋の緒が切れて「バカヤロー」と言ってしまったのだ。ハプニング性のある解散だ。大平の場合も、1979年9月の増税解散のあと翌年5月に内閣不信任案が可決されて、解散を余儀なくされたのだ。いずれも、ものの弾みで断行された解散である。ところが今度の解散説は「0増5減」に基づく区割り法案の成立を巡って台頭している。またしても民主党の妖怪・輿石東が関与している。同党参院議員会長・輿石は昨年の幹事長時代に「0増5減」法案を人質に取り、成立を先延ばしすることによって解散を回避して、ダブル選挙に持ち込む戦術をとった。ご都合主義にも今度は真逆だ。ダブルを回避するために区割り法案を人質に取って成立を遅らせようとしているのだ。こんな勝手な男は見たことがない。
というのも、通常国会が延長されずに5月26日に閉会する場合、参院選挙は7月4日公示、21日投票となる。これに合わせて衆院選を断行する場合には、7月9日公示となるが、区割り法案の成立なしでの解散はやりにくい。区割り法案の施行には1か月かかるから、6月9日までの成立が不可欠だ。解散を恐れる輿石はこのキーポイントの6月9日より遅らせて成立させようとしているのだ。相変わらずの姑息(こそく)さだが、逆に自民党はこれを“威し”に使っているのだ。「成立を遅らせるなら解散だぞ」と脅しているのだ。自民党も尻が割れていると言えば割れている。区割り法案は4月23日に衆院を通過しており、憲法の60日ルールに基づき、参院で可決されなくても、6月下旬には衆院の3分の2の多数で可決成立できるのだ。その計算の上に衆院通過を図ったのであり、「同月9日までの成立」は“威し”であり、裏は見え見えなのだ。
この対野党戦略は、予算が15日に成立して、焦点が区割り法案に移行すると、当面悪い病気のように出たり引っ込んだりするだろう。しかし、ダブルを言い募る政治家は、自分自身の信用がなくなると心得るべきだ。自民党幹事長・石破茂もいいかげんに見え透いた発言を繰り返すべきではない。確かにいまダブル選挙をやれば、過去2回と同様に自民党が圧勝する可能性がある。安倍の人気は70%台の高支持率に支えられており、自民党支持率も40%台だ。権力亡者ならダブルは絶好のチャンスで、まさに垂涎の政治状況である。しかし、冒頭述べたように、いくら伝家の宝刀でも“解散様”をおろそかに扱ってはならないのだ。議員になったばかりでまた選挙では、自民党内からも批判が噴出する。公明党も組織票が割れるから恐らく反対だろう。総選挙で2か月の政治空白を作れば、せっかくアベノミクスで景気回復の兆しが出たところに水を差す。そこで安倍がどうするかだが、安倍は奇道は歩まない。政治の本道を歩くだろう。そういう政治家だ。1日に外遊先で「いずれかの時点では国民に信を問わなければいけない。適切な時期をとらえて解散する」と思わせぶりな発言をしたが、10日にはタレント・みのもんたに「参院選じゃないですかね」と他人事のように述べている。この辺りが本音だろう。
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