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2013-05-09 00:00
苦悩の議員外交に“解任の報酬”はない
杉浦 正章
政治評論家
故人いわく「鷹が飛べば糞蠅も飛ぶ」だ。参院がまさにその状態に至った。外相経験者として明らかに対中議員外交で国益を守った環境委員長・川口順子を、参院の野党がよってたかって解任決議を成立させるという。それも憲政史上初の解任であり、パフォーマンスだ。参院選挙に向けて民主党をはじめ野党は国民にその存在価値を顕示しようとしているのだろうが、方向が全く違う。与党を3年3か月経験した民主党が、貧すれば鈍するで、ここまで物事を見えなくなってしまったのかと情けなくなる。川口の手続きに瑕疵(かし)はなかった。北京でのアジア各国の首相・外相経験者の国際会議に日本の政治家として1人だけ参加した川口は、国会の許可を得た2日間で帰国する予定であったが、序列7位の国務委員・楊潔チヤンジエチー(よう・けつち)との会談が急きょ決まり、4月25日まで滞在を1日延長するよう自民党執行部に申請、同党は野党との調整に入った。ところが野党はこれに応じず、調整がつかないまま川口はあえて楊との会談の方を選んだ。なぜなら国際会議は大半が尖閣問題に費やされており、その流れを見て楊との会談は欠席できないと考えたからである。
川口は帰国後野党に陳謝した上で「私が出席しなかったら日本の立場を代弁できる者がいない。国益を守ることができたと自負している」と述べている。恐らくその通りであっただろう。尖閣問題が起きて以来、日中関係は冷え込みの極致に至り、有効な外交チャンネルも見いだせないままの状況が続いている。会談をしたからと言って問題が一挙に解決出来るものではないが、この時点で中国首脳の生の声を聞いておくことが、いかに重要かは小学生でも分かる。加えて自国への影響力の大きいアジア各国の政治家を前にして、楊が中国ペースで日本を“欠席裁判”をしたらどうなるかだ。川口が一人いないだけで、楊の発言は変わったはずだ。会談の空気も中国ペースで推移することは間違いない。そもそも、民主党は政権当初から議員外交の必要を訴えており、予算委員長の石井一に至っては、昨年の連休に4日間の予定で申請していたフィリピンへの「外遊」を、勝手に11日間に変更して遊びほうけ、委員長を辞任しているではないか。川口は国益を考えたが、石井は何を考えたのか。民主党国対委員長代行・松原仁は「国会議員の矜持として理解できない。委員長として自分のできることをまずやるというのが正常なセンスだ」と宣うた。矜持とは何か。誇りだ。矜持をもって川口は会談に臨んだのだ。
民主党議員の大半がそうであるように。テレビ意識のパフォーマンスなどではない。正常なセンスとは、「苦悩の選択」(川口)で議員外交を選んだセンスだ。だいいち委員会などは委員長代理を立てて開催すればできたのである。それをしなかったのはなぜか。参院選向けにあえて平地に波乱を起こすことを狙ったのだ。一番愚かな野党幹部の発言は、維新共同代表・橋下徹だ。「中国要人とのアポイントが入るからといって、尻尾を振って喜ぶような姿は情けない」「外交の責任を負っていない議員が中国要人と会う意味がわからない」と発言した。大阪のタレントレベルでは議員外交の重要性を理解せよといっても無理だろうが、意味が分からないなら「黙っていろ」と言いたい。ここはどうみても「ご苦労様」という度量があってしかるべき場面だ。
政治評論家になれば相当なレベルになれる自民党副総裁、高村正彦の発言が一番妥当だ。「日中関係にいろいろある中で、それに対処するために残ったという国益と、委員会を開けなかった国益とどっちが重いか。委員会は開こうと思えば開くことができた。野党が国益を担った川口氏を裁くことは、とんでもない」と述べた。この問題に当たっての自民党の判断は幹事長・石破茂をはじめ適切であった。最初から国民の支持がどこに行くかを見極めた。一方で鬼の首を取ったようにはしゃいだ民主党代表・海江田万里は「夏の虫」であった。源平盛衰記に「愚人は夏の虫、飛んで火に焼く」とある。これで参院選に勝てると思ったら大間違いだ。新聞論調は朝日の両成敗の社説「不毛な対立にあきれる」よりも、読売の「委員長の解任は行き過ぎだ」の方が急所を突いている。
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