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2013-05-07 00:00
(連載)いかにも物足りないEAVGⅡ報告書(2)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
金大中(在任期間;1998年2月~2003年2月)の後を継いだ盧武鉉大統領も、就任直後は、アジア地域統合に熱心だった。同氏は、2003年2月の大統領就任演説では、「北東アジアにおける韓国の役割」を強調し、韓国が日中両国の「バランサー」として機能していくというようなことを言っていた。しかし、ほどなくして、米韓関係が悪化し、それにつれておかしくなっていった。盧武鉉政権は、悪化した対米関係を埋め合わせるために、いくつかの重要な政策に踏み切ることとなった。
その一つが、アメリカのイラク攻撃に、約3,000名の韓国軍部隊を派遣することであり、もう一つが、米韓FTAの交渉開始の決定である。私の知る限り、当時の韓国の国際経済学者の大半が米韓FTAに反対の姿勢をとっていた。当時、私は、国際会議等で、韓国の専門家に対して、米韓FTAを推進することは、アジア地域統合推進のために必要とされる地域の結束力(cohesion)を損なうことになるとして批判していたが、FTAを推進すべしとする韓国の専門家は、少なくとも当初は、むしろ少数派だった。
李明博政権(2008年2月~2013年2月)になってからは、良く言えばグローバルな全方位政策だが、悪く言えば自国の繁栄だけを考慮し、アジア域内経済の発展のために韓国が何をなすべきかという視点がほとんど欠落していた。一般に、小国というものは、往々にしてかなり身勝手な政策をとりがちである。例えば、マネー・ローンダリングに利用されやすいタックス・ヘイヴンや秘匿性の高い銀行口座の提供等々である。しかし、韓国は、そうした国々とは全く異なり、アジアの中でも世界の中でも、もはやかなりの影響力を持つ国であり、露骨に一国繁栄主義に邁進することは許されないのではないだろうか。
「ASEAN+3」13カ国については、2003年に設立された東アジア・シンクタンク・ネットワーク(NEAT)の枠組みがあり、毎年、11月の「ASEAN+3」サミット(以下「APTサミット」)に対して政策提言をする資格が与えられている。NEATは、毎年8月にその年の主催国において総会を開催し、文書をまとめ、その年のAPTサミットに提出する。しかしながら、今回のEAVGⅡ報告書においては、NEATについて、全く触れられていないということがある。こうしたことから、ASEAN諸国でNEATのカントリー・コーディネーターを務めるシンクタンクの中には、EAVGⅡ報告書を強く批判する向きもあるようである。こうした批判は、的を射たものであると筆者は考える。NEATの場において、EAVGⅡの妥当性や今後の取り扱いについて、然るべく議論するべきと考える。(おわり)
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