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2013-05-06 00:00
(連載)いかにも物足りないEAVGⅡ報告書(1)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
1999年、韓国の金大中大統領の発案によって、「ASEAN+3」13カ国の民間の識者によって構成される東アジア・ヴィジョン・グループ(EAVG)が形成され、2001年11月、『東アジア共同体の設立に向けて』と題するEAVG報告書が発表された。これは、アジア地域統合についてかなり野心的な内容であり、「東アジア共同体」の建設を目指すことが謳われた。それを踏まえ、13カ国政府の代表による東アジア・スタディ・グループ(EASG)が形成され、2002年11月に同最終報告書がまとめられ、同年開催の第6回ASEAN+3サミット(於・プノンペン)に報告された。この最終報告書では、9つの中長期的措置と17の短期的措置が盛り込まれ、今日に至るまで、東アジア地域統合の道筋を示した最も権威ある13カ国間の公式合意文書といえる。
それから約10年後、韓国の李明博大統領の発案によって、EAVGⅡが形成され、2012年11月、EAVGⅡ報告書が出た。しかし、率直に言って、その内容はいかにも物足りない。筆者は、最近、トップ・クラスのASEAN事務局関係者と話をする機会があったが、彼も似たような印象を持っていた。EAVGⅡのキャッチ・フレーズは、「グローバルな東アジア」(“Global East Asia”)となっており、アジアの域内の地域統合とは無縁の概念である。すなわち、EAVGⅡは、筆者に言わせれば、そもそも発想の初手からピントが外れている。先にも述べたように、EAVGは、元々、金大中大統領のイニシアティブによるものなので、今回のEAVGⅡについても、韓国がリーダーシップを取り、元外相YOON Yong-kwan(ソウル大学)が代表を務めた。
EAVGⅡの構成メンバーは、各国1人づつ合計13名であるが、そのうち、アジア地域統合に関与する識者として名の通っている人は、インドネシアのユスフ・ワナンディ(CSIS)、中国のZhang Yunling(社会科学院)、日本の田中明彦(JICA)の3名だけであり、それ例外の10名は、ほとんどすべてが各国の外交官出身者などの官僚OBである。率直に言って、アジア地域統合に関する賢人会議とは言えない。加えて、EAVGは、そもそも半官半民のトラック2の枠組みだったはずであり、官僚OB中心のメンバー構成となったこと自体も非常に問題である。
このように、EAVGⅡがかなり失望的な内容になってしまった一番の原因は、韓国が、「グローバルな東アジア」などという、地域統合としては全く空虚な概念を引っ提げて、リーダーシップとったことにある。かつて、韓国は、アジア地域統合にかなり大きな役割果たした。これまで、アジア地域統合の推進に大きな貢献を果たした人物を3人挙げるとすれば、第1にマハティール・ビン・ムハンマド、第2に金大中、第3にゴー・チョクトン(シンガポール前首相)だと、筆者はかねてから著書や論文などで主張してきた。(つづく)
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