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2013-04-15 00:00
「安倍長期政権」が霞ヶ関を完全掌握
杉浦 正章
政治評論家
民主党政権で“脱官僚”の合い言葉の下に“血祭り”に上げられた霞ヶ関の官僚が、上も下も競うかのように安倍政権に大接近。まるでごますり競争の観を呈している。「長期政権説」が定着し始めたのが最大の原因だ。官僚ほど政権の行方に“嗅覚”が鋭い人種はいない。つぶれるとなればすぐに見放すし、長期政権となれば必死になって一角に食い込もうとする。時の政権はこれを活用して政権運営をする。まさに相互利益の相乗効果が久しぶりに安倍政権で発揮されつつある。その官僚の動物的嗅覚を2002年9月の歴史的な日朝首脳会談実現の立役者となった元外交官・田中均が如実に語った。4月13日のテレビで田中は、司会者から「いまは北との交渉ができる人がいないのはなぜか」と問われて、「1年で代わってゆく政権で誰が真剣に何かを打開しようと思いますか?」と官僚の本音を臆面もなく明らかにした。田中は霞ヶ関の心理状態について「政治家からひょっとしたらはしごを外されるのではないか、と官僚は怖くてしょうがないのだ」と、いかに官僚が政治家を信頼していないかの“本音”を説明。
さらに自分の北朝鮮との秘密交渉で時の首相小泉純一郎が果たした役割について「小泉首相は秘密交渉に関して確信犯的な人であった。途中でさじを投げ出すようなことは絶対にしないから、交渉する私は楽だった」とも述べた。総じて発言は、官僚がいかに吾が身の保全を第一に考えているか、ということをはからずも露呈したことになる。この我が身大事の官僚心理を全く理解しないで、「平成維新だ」(小沢一郎)とばかりに、「脱官僚」という無謀な挑戦をしたのが民主党の3年3か月であった。まず各省連携の要であった事務次官会議をパーの鳩山由紀夫が廃止してしまった。これで首相官邸と閣僚トップとの絆が壊れた。続いて打ち出したのが「事業仕分け」なる究極のポピュリズムだった。この実態は官僚いびりであった。何でも民主党政権を応援したがった朝日新聞が、悔し紛れか、いまだに「事業仕分け、民主党政権の大いなる遺産」(14日付)と褒めあげているが、往生際が悪い。事業仕分け礼賛と原発ゼロの朝日は、総選挙で完敗したことがいまだに分かっていない。その事業仕分けも「パンがなければ、ケーキを食べよ」と言ったマリー・アントワネットのように、とんちんかんな女にスパコン競争を「2位じゃあどうしていけないの」と質問させて、馬脚が現れた。要するに、無知の上に成り立った「脱官僚宣言」であったのだ。
自民党の場合毎朝の部会、調査会で議員らは必死になって法案、政策を勉強している。そして例えば故山中貞則のように税制に関しては官僚を上回る知識、判断力を持つ議員を登場させた。官僚はこうした政治家には一も二もなく従うのだ。しかし、長屋の熊さん、八さんのような議員どもに、誇り高いプライドを傷つけられて、「脱官僚だ」とことごとく“いじめ”にかかられては、官僚どもはサボタージュということになる。例えば、外務省は3年3か月の間に何度も事実上のサボタージュをしているとしか思えない現象があった。それを一番象徴したのは、2010年の尖閣での中国漁船衝突事件で、菅政権がすべてを検事のせいにして船長を釈放した問題だ。なすがままで、何の批判もしない。官僚が身を挺していさめたなどという言葉は聞いたことがない。安倍政権ではその外務省が打って変わったように変わった。安倍とオバマの日米首脳会談には総力を挙げて取り組み、落ち度ゼロを演出した。他の省庁も活気づいた。原発再稼働で菅直人の横やりとはしご外しに何度もあった経産省も、日米首脳会談で原発ゼロを全面否定した首相・安倍晋三を信頼して、再稼働への準備を着々進めている。
最近霞ヶ関のある中級官僚が明らかにした面白い話がある。安倍政権になってからの霞ヶ関の姿について、「幹部は常に大臣の意向にピリピリして大変そうだが、幹部ではない気楽な私が、一国民としての目線で見ると、よい緊張感だと感ずる」そうだ。どの省庁も、アベノミクスの第3の柱である成長戦略について、「この政策で経済成長に貢献できる」という政策の打ち出しに躍起になっているというのだ。しかし、さすがに官僚とあって、自民党政権の“圧力”には対処の仕方を心得ている。政策の中身はそう簡単に変えられないものもあるので、説明する言葉を変えたりして、工夫しているという。「この3年で失われた○○を取り戻す」と書くのが流行っているのだそうだ。何となく方針を変えた感じがあってパスしやすいというのだ。だます方もだます方だが、簡単にだまされる方もだらしがない。こうして安倍政権は官僚のサボタージュをおおむね“平定”して、わが世の春を謳歌(おうか)しているのである。筆者の決まり文句の「寸前暗黒」は当分使えそうもない。
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