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2013-03-22 00:00
(連載)平和大国のイメージが日本のソフトパワーである(1)
加藤 朗
桜美林大学教授
安倍政権が誕生して、憲法九条改正の可能性が地平線の向こうにかすかに見え始めてきた。これも小選挙区制のなせる業であろうか。中選挙区制の時には、自民党が衆参で多数を占めるものの、常に野党が憲法九条改正阻止に必要な三分の一以上の議席を占めていた。そのため憲法九条改正は実現できなかった。しかし、次期参議院選挙の結果次第では、自民党や日本維新の会など憲法九条改正を主張する政党が連携すれば改正に必要な三分の二以上の議席を衆参両院で獲得することができる。国民投票というハードルはあるものの、昨今の国内外の情勢を見るに、風が吹いて一気に憲法九条改正ということになりかねない。しかし、冷静に考えてみよう。今憲法を改正して自衛隊を軍隊として認め国防軍と呼称を変えたとして、また「前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない」と自民党改正案の九条二項のように集団的自衛権を認めたとして、現状とどれほどの差があるのだろうか。第一次安倍政権の時に防衛庁が防衛省に名前が変わったが、それで自衛隊が強くなったという噂も、予算が増額されたという話も聞かない。
また集団的自衛権の問題も憲法改正の問題ではなく政府解釈や政策の問題である。国家には個別も集団もなく自衛権はある。何も鶏頭を割くに牛刀を用いるような愚を犯すべきではない。だからと言って、自民党改正案に反対する護憲派原理主義者のように国家の自衛権をすべて否定し国家が国民を守らないのなら、アメリカのように個人の自衛(武装)権を憲法で保障すべきである。自衛権無き国家は近代国家ではないが故に、自衛権の否定は国家の否定である。憲法が保障しなくとも個人に自然権としての武装権はあるが故に、国家の自衛権を否定するなら自衛隊の装備をすべて個人に譲渡すべきである。
今憲法を改正すれば戦後築きあげた平和国家としての国家ブランドを大きく毀損することになる。経済大国としての国家ブランドは中国に譲ってしまった。 技術大国という国家ブランドも韓国や台湾のメーカーに脅かされている。今や残るは平和大国という国家ブランドだけである。憲法九条の改正は、この国家ブラ ンドを自ら破棄するに等しい。アメリカが自国を自由と民主主義の国として世界中に宣伝しているように、日本も平和大国のイメージを世界中にアピールすることが、日本外交にとって価値観の混迷する国際社会に対するソフトパワーになる。
では中国や北朝鮮から攻撃されたらどうするのか、という反論が改憲派から聞こえてきそうである。今まで通り暗黙の裡に、あるいは集団的自衛権の政府解釈を変更して、今まで以上に自衛隊の装備を増強し日米同盟を強固にすればいいのである。自衛権の行使は憲法問題ではなく政策問題である。憲法改正をしなくてもできることである。政府解釈の変更は護憲派からは憲法違反だという絶叫が聞こえてきそうである。ならば現実に中国や北朝鮮などの脅威にどのように対処するのか。国家による防衛に反対するなら、前述のように、個人の武装権を認めるべきである。(つづく)
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