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2013-03-08 00:00
軍事力より外交優先のケリー国務長官
川上 高司
拓殖大学教授
2月13日、ケリー長官は就任以来初めて国務長官としての演説をバージニア大学で行った。バージニア大学は初代国務長官であったトマス・ジェファーソンが創設した由緒ある大学である。ジェファーソンは自らの墓碑銘に人生3つの功績を記したがそのうちのひとつが「バージニア大学の創設」だった。3つの中に第3代大統領就任ははいっていないので、彼にとって大統領職よりもバージニア大学のほうが重要だったのだろう。初代国務長官の人生をかけた思いがつまった大学を最初の演説の場にあえて選んだ点にケリー長官の国務長官にかける強い信念を感じるが、アメリカではそれほど大きなニュースにはならなかった。
むしろロシアのメディア「ボイス・オブ・ロシア」は大きくとりあげて解説をネット版に載せた。まるでケリー長官の一挙一動を見守りそこからアメリカの外交政策を読み取ろうとしているかのようであり、同時にそれはケリー長官への大きな期待、米露関係の改善への期待が溢れているようにも見える。ケリー長官は「国務省には強力な援護者がいないので予算を獲得できない」と、国防総省は国防企業の猛烈なロビー活動で予算獲得に成功していることを皮肉り、もともと予算がないから予算削減もできないとジョークを飛ばした。そしてアメリカの外交政策を妨害しているのは実は議会だと共和党の頑なで非協力的な姿勢を批判した。
ボイス・オブ・ロシアによればケリー長官は「軍事力で問題を解決すれば結局高くつく、アメリカは外交力で解決していくべきでそのために予算を惜しんではならない」と述べたが、そこに読み取れるのはいわゆる「ソフト・パワー」による外交への転換だという。一期目からオバマ大統領は「ソフト・パワー」を謳っていたが、ロシアから見ればむしろアメリカの態度は強硬だったとロシア側はとらえており、「2期目になって再選を考えなくてもよくなったからきっとオバマ大統領は自分の理想を追求する。ソフト・パワーを駆使する外交を展開するだろう」と希望が膨らんでいるのである。
ケリー長官は当初イスラエルを最初の訪問国としていたが取りやめてイギリス、ドイツ、イタリア、フランス、トルコ、エジプト、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、カタールを訪問することに変更した。明らかにシリアやアフガニスタンなどの中東問題に重点を置いた外遊であり、アメリカ二期目の外交政策がいかに中東問題を重視しているかが伺える。残念なことにアレン将軍はNATO司令官の指名を辞退して退役したため、オバマ大統領は急遽後任人事を決めなくてはならなくなった。ヘーゲル国防長官の承認も遅れている。アメリカ外交政策が内政に足を引っ張られれば、ケリー長官の言うように「議会がアメリカの信頼を貶めている」と再びアメリカの威信が失墜しかねない。そして議会のそんな惨状はジェファーソンをはじめとする建国の父たちが望んだものではないはずだ。
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