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2013-03-01 00:00
「オバマ2」外交への不安と期待
高畑 昭男
ジャーナリスト
2期目の米大統領は通例、外交で歴史に残る業績を挙げようとするものだ。だが、オバマ氏の場合は必ずしもそうではないようだ。2期目の就任演説では、移民、銃犯罪対策、同性愛者の権利など野心的な内政課題を全面展開し、「リベラル色全開」と呼ばれた。先月12日に行った一般教書演説でも、全文8ページの草稿の中で外交・安保に触れた部分は2ページに満たない。歴代大統領と比べても「内政重視」が鮮明に表れたといっていい。2期目が内政重視に傾くとの予測は、実は昨年末から出ていた。
例えば、ブッシュ前共和党政権でパウエル国務長官のスピーチライターなどを務めたアダム・ガーフィンクル氏によれば、「オバマ2」外交は次の4点に集約できるという。(1)外交より内政(アフガニスタン戦争終結を急ぎ、新たな対外軍事介入はしない。危機を回避しつつ内政に集中する)、(2)リベラル国際主義(多国間、国際機関による紛争解決を志向し、単独行動は控える)、(3)対話と妥協(米国が適切な譲歩をすれば、相手が非民主国家でも取り引きは可能と考える)、(4)オフショア志向(財政赤字削減と軍事技術の活用に伴い、伝統的な前方展開を縮小し、オフショア型の均衡戦略を志向する)。
これらの予測が的中するどうかは分からないが、中でも最も心配なのは(4)のオフショア志向だろう。「オフショア」とは遠距離や域外から関与する戦略といえるが、日米同盟にとっては米国版「駐留なき安保」ともいうべき結果を招く恐れがあるからだ。アジアの米軍再編の軸の一つとなる米軍普天間飛行場の移設は遅々として進まない。米国防費の削減圧力とともに、中国との正面対決を忌避する心理に流れれば、長期的にアジアの前方展開戦力を縮小させていく動きにもつながりかねない。大統領の演説や新外交・安保チームのケリー国務長官、ヘーゲル次期国防長官らの言動をみていると、(1)~(3)の傾向についても「当たらずとも遠からず」という感じがする。
オバマ政権が1期目後半に打ち出したアジア太平洋シフト戦略には、外交・軍事両面で中国の軍事的台頭と海洋覇権を強く牽制する狙いがある。その推進役だったクリントン国務長官は退任し、後を託された人々の具体的対応はまだ明確でない。尖閣諸島をめぐる日中対立は、中国海軍艦艇が海上自衛隊護衛艦に射撃管制用レーダーを照射する異常事態に発展した。それなのに、一連の演説でオバマ氏が「日米同盟」に全く言及せず、中国の国際的責任に触れなかったことにも疑問が残る。そんな時だからこそ、首脳同士の意思疎通が大切だ。元はといえば、オバマ大統領が初来日した2009年、当時の鳩山由紀夫首相が「トラストミー」発言などで米国の信頼を失い、同盟空洞化が深まった。それを考えれば、反省すべきは日本にもある。外交・安保面での連携強化に加えて、「オバマ2」では環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への日本の交渉参加問題を含めて経済・通商面でも「強い同盟」を内外に示すことが必須といえる。安倍首相とオバマ氏に寄せられる期待と責任はそれだけ重い。
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