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2013-02-05 00:00
安倍はオバマにTPP交渉参加を表明せよ
杉浦 正章
政治評論家
煎じ詰めれば簡単な話だ。環太平洋経済連携協定(TPP)は、まず交渉に参加して「聖域無き関税撤廃」の壁を突き崩し、それができなければ、脱退する選択をすればよいだけだ。交渉参加前から、落ち目の農業団体の組織票だけを目当てに、声高に反対するのは、古色蒼然の先祖返りにほかならない。自民党は、都市部の票がなければ294議席は達成できなかったことを思い起こすべきだ。通商国家としての展望を損ねてはならない。農業団体に支配される構図が鮮明だ。自民党の反対派がつくる「TPP参加の即時撤回を求める会」の会員は200人を超え、頭から反対を唱えているが、TPPとは何かも知らぬままの付和雷同型議員がほとんどだ。冷静になって日本の産業構造を見てみるがよい。農業従事者平均年齢でもっとも多いのは70歳以上で、全体のほぼ 4割。60代も3割だ。60歳以上が全体の7割を占めているのだ。30代以下は、わずか5%。要するに、農業は爺さん婆さんで、その息子や孫はTPPで利益を受ける仕事に従事しているということだ。その時代錯誤の「即時撤回の会」が安倍訪米を前に2月8日に会合、気勢を上げるという。自民党の外交・経済連携調査会(衛藤征士郎会長)は6日に会合を開き、首相訪米前の提言とりまとめを目指す。
撤回側はその提言に影響力を行使しようというわけで、自民党内は政権発足後初の重要政治テーマでのバトルが展開されようとしている。ここで先行国が唱えている「聖域無き関税撤廃」の実態はどうかと言えば、事実上「聖域ある関税撤廃」となりつつあるのだ。そもそもTPP加盟国は昨年中の締結を目指していたが、先延ばしとなった。とりあえずの目標は10月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議である。なぜ延びたかと言えば、米国やカナダが自国産業の保護の主張をして、集約が不可能となったからだ。従って安倍がお経のように「聖域なき関税撤廃を前提にする限り、交渉に参加しない」と唱える根拠は薄れているのだ。米国が砂糖を例外として主張するなら、日本は当然コメを例外とすればよいだけだ。安倍の発言も、比重が総選挙前は「参加しない」に重点を置き、今年になってから「参院選前に方向性を示す」に転換、党内から反発が出ると見るや、ぐらつき始めているのが現状だ。政調会長・高市早苗に至っては「日米首脳会談で、安倍首相は参加を表明すべきでない」との考えを示している。
しかし、自民・公明両党は総選挙後の連立政権合意書で「自由貿易をこれまで以上に推進する」としたうえ、TPPについて「国益にかなう最善の道を求める」と明記した。明らかに参加に柔軟な方針の表明である。安倍の本音は分かり切っている。「交渉の参加はせざるを得ない」というところにあるに違いない。そして下旬のオバマとの会談で少しでも前向きの表現でTPP問題に対処したいのだ。同会談は民主党がぶちこわした日米同盟関係の再構築を目指す重要な会談であり、TPPへの参加は再構築への踏み石になるべき性格のものである。従って避けて通るべきではあるまい。また苦肉の策で“密約”めいたこともすべきではない。首相というのは、国内の反対を前に追い詰められると、すぐに密約の誘惑に駆られる“習性”がある。日米繊維交渉での佐藤・ニクソン密約が顕著な例だ。
米国が日本に輸出自主規制を求めた日米繊維交渉をめぐり、佐藤栄作とニクソンが1969年に年内決着でひそかに大筋合意したのだ。開示された外交文書でも明らかになっている。この「密約」履行の遅れが日米関係の険悪化を招き、ニクソン訪中と金ドル交換停止という2つの「ニクソンショック」につながっているのだ。下手に密約をして、「オバマ訪中ショック」を招くようなことになれば、日米同盟強化どころではなくなる。密約しても必ずばれる。あらかじめクギを刺しておく。要するに、日本は通商国家と工業立国で生きていくしか道はないのだ。交渉への参加もせずに、農協が怖くて馬鹿の一つ覚えで「反対」を唱えても、得るものはゼロだ。参加をして日本の主張を新たな貿易・投資ルールの秩序に盛り込まなければ、国家百年の計を誤る。10月の決着を目指す場合、日本も早期に対応を迫られる。米国は日本が参加表明しても、議会の承認を得る必要がある。その手続きには3カ月かかるとされる。安倍の安全運転が参院選後に急転換しても、10月のAPECに間に合わなくなる恐れもがある。自民党も、安倍も、ここは大局を見て交渉参加の意志表示をオバマにすべきである。
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