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2013-02-03 00:00
(連載)領土問題は無差別的国際法主義で解決せよ(2)
山下 英次
大阪市立大学名誉教授
ところで、国連加盟国193カ国のうち、他国からICJに訴えられた場合に応訴する義務が生じることになる強制管轄権を受諾している国は、現在、67カ国(含む日本)である。ほとんどの西欧諸国、カナダ、豪州、ニュージ-ランド、インド、パキスタン、フィリピンなどが強制管轄権の受諾国であるが、アメリカは受諾していない。わが国は、まず一般論として、国境紛争のICJでの解決を国際社会に働きかけると同時に、わが国としても、そうした原則に従うと宣言すべきである。その上で、西欧諸国やカナダなどすでに強制管轄権を受け入れている国々と連帯しつつ、米国を含めてまだICJの強制管轄権を受諾していないすべての国に対して、これを受け入れるよう呼びかけるなど、世界的な環境づくりに尽力すべきである。領土土問題についても、国際法による紛争解決の慣行を世界的に普及せしめていくということである。
かつて、わが国は、通商問題について、米国から悪名高い通商法301条(米国内法)に基づく一方的な制裁によって恫喝され、数々の分野で、二国間交渉を通じて譲歩してきたという極めて苦い経験がある。具体的には、ニクソン・ショックの1985年からWTO設立の1995までの期間である。しかし、WTOに紛争処理システムができてからは、そうしたわずらわしいというよりも極めて理不尽な日米二国間交渉から基本的に解放され、多国間の司法システムに委ねることができるようになった。領土問題についても、多国間の紛争処理メカニズムを確立しなければならない。
現実にも、近年、ICJで領有権を解決する例が増えている。今世紀に入ってから、すでに7件が裁定結果が出ており、現在、1件が審理中である。そのうち、アジアでは、マレーシアがインドネシアとシンガポールを相手にした2件については領土問題が決着した。ICJの裁定結果は、前者がマレーシア側の勝訴(2002年)、後者がシンガポール側の勝訴(2008年)となった。また、現在、プレア・ビヘア寺院を巡るカンボジアとタイの紛争がICJで審理中である。
しかし、いずれにせよ、裁判の行方がどうなるかは定かとは言えないので、ICJでの審理に向けて、国際的なPR戦略をしっかり行うことも、わが国として極めて重要である。その意味から、尖閣諸島については、領土問題は存在しないとする従来の立場を続けることは、むしろ、わが国が積極的なPR戦略を取ることをかえって妨げることになりかねないのではないかと危惧する。この点についても、見直して然るべきではないだろうか。(おわり)
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