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2013-01-25 00:00
困難が山積みのアフガン撤退プラン
川上 高司
拓殖大学教授
第2期政権のスタートが目前に迫ってきて、政権を去る人、新たに加わる人が交錯する時期に、任期最後の置き土産を大統領に送った人物がいる。オバマ第二期政権のみならずアメリカにとっても重大な意味を持つ「アフガニスタンからの撤退」プランを、ジョン・アレン現地司令官は3種類用意して大統領に提示した。アレン自身は2月に異動予定である。上司のパネッタ国防長官も辞職するため、撤退プランの実現は次の司令官や国防長官に委ねられるため、文字通り「置き土産」となる。アレン司令官の提示したプランは、2014年以降アフガニスタンに駐留する部隊の規模とその役割を示したものであり、撤退ペースや方法について言及したものではない。
この3つのプランではいずれも米軍が「完全撤退」するのではなく必要人員は引き続き駐留することが前提となっている。第1プランは、駐留軍は6千人規模で、特殊作戦部隊のみがバグラム空軍基地に終結して駐留し、対テロ作戦を継続する。第2プランでは駐留軍は1万人規模で、第1プランの特殊作戦部隊6千人に加えてアフガン軍養成のための人員4千人が残る。4千人はアフガン軍の基地に駐留しアフガン軍とともに現場に出ることもある。この場合はNATO軍による空爆支援の余地が残されることになる。第3プランは2万人規模の駐留軍となる。第2プランの1万人に加えて、通常の地上部隊1万人がバグラムとカンダハルの二箇所の基地に駐留する。この1万人は、アフガン軍を支援する実働部隊となる。つまりアフガン軍から支援の要請があった場合に展開する部隊となる。
この3つのプランの提示を受けて、オバマ大統領は撤退政策の検討に入ることになる。大統領は「駐留部隊は最小限に抑えたい」との意向があるようで、その規模は3千人から9千人の間に抑えるのではないかと、米ニューヨークタイムズ紙電子版は推測している。現実の問題は現在6万6千人も展開している米兵と装備をどうやって安全に撤退させるかである。
昨年来閉鎖されたままのパキスタンからアフガニスタンに通じる輸送道路は相変わらず閉じたままで物資の輸送もままならない状態である。しかも最も反米感情の強いアフガニスタンとパキスタンの国境地域を通過するには、パキスタンの協力が不可欠であるしパキスタンタリバンとの交渉も避けては通れない。困難は山積みである。だがそれでも撤退してこの長い戦争を終わらせなければならない。そのためには手段を選ばずどんな困難にも立ち向かう、そんな強い意志を胸に秘めてオバマ大統領は第2期政権をスタートさせるのだろう。
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