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2013-01-21 00:00
密かに物議を醸すCIA長官指名
川上 高司
拓殖大学教授
国防長官に指名されたチャック・ヘーゲルが注目され、議会の承認を得られるかどうかが大きく取り上げられる陰で、やはり議会で物議を醸し出している人物がいる。オバマ大統領が2期目にCIA長官に指名したジョン・ブレナンは、イラク戦争の時の拷問問題に関わっているのではとの疑惑から、米議会での承認が紛糾しそうなのである。幸か不幸かヘーゲルに注目が集まっているためそれほどメディアでは話題にはならないが承認を得るため大統領は闘いを避けられそうにもない。
ブレナンはCIAの局員として豊富なキャリアを積んできた。特にサウジアラビアでの活動経験からアラビア語が流暢で、アラブ世界をよく知っている。また、前ブッシュ大統領時代にはテネットCIA長官の補佐官を務めており、2004年に発覚した米軍によるイラク人への拷問に関わっていたとの疑惑が持たれ、未だにその疑惑は晴れていない。ブレナンはオバマ政権に移行した後は、対テロ政策のアドバイザーとしてオバマ大統領に仕えた。オバマ大統領の信頼は絶大で無人爆撃機による対テロ政策の推進者でもある。昨年話題になった対テロ政策での「暗殺リスト」作成もブレナンの手によるものだといわれている。
議会では彼の拷問疑惑に特にジョン・マケイン上院議員がかみついている。マケイン議員はベトナム戦争時代に捕虜となって過酷な拷問を体験しているだけに、拷問問題には妥協の余地がないほど厳しい。さらにブレナンがCIA長官に就任すると、アフガニスタンやパキスタン、イエメンなどへの無人爆撃機による攻撃が増加するのではないかという懸念も生じている。そもそも無人爆撃機による暗殺が正当な手段であるのかという疑問が生じている上、市民の犠牲が増えるという心配もあり人道的な見地からブレナン就任を懸念する声は小さくない。
先にも述べたようにブレナンへの大統領の信頼は絶大である。過去を振り返ってもCIA長官と大統領の関係は必ずしも良好ではなかった。しかも前ブッシュ大統領時代には情報長官が新設されて、CIA長官は監督下に置かれるようになった。もしブレナンが長官に就任すると、大統領との良好な関係の下で情報長官をも凌駕する強い影響力を持つ可能性がある。ブレナン指名にしろヘーゲル指名にしろ、本質は議会と大統領の関係をどうするかである。すでにスーザン・ライスの国務長官指名を断念して議会に妥協しているオバマ大統領にとってさらに議会に妥協するのかあるいは本気で対決するのか、この1年の関係を決めるともいえる内政の正念場である。
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