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2013-01-11 00:00
(連載)「宇宙の平和利用原則」は誰に向けられたのか(3)
鈴木 一人
北海道大学大学院法学研究科教授
私は、日本国憲法の平和に対する考え方は素晴らしいものがあると思っているし、その理念は守られるべきだと考えている。しかし、その平和憲法の考え方を歪めて解釈し、「宇宙の平和利用=自衛隊が使わないこと」といった、現実に合わない原則にまで展開することには異議がある。私は宇宙の平和利用とは自衛隊を遠ざけることではなく、政府が積極的に宇宙を利用し、紛争が起きる兆候を早期に発見し、紛争に至らないための交渉を行って、武力行使をせずに国際紛争を解決するという意味だと理解している。
そのためには、偵察や国連平和維持活動などのために自衛隊が宇宙システムを利用することは積極的に行うべきだと考えている。大事なことは、その自衛隊をきちんと管理し、日本が他国と武力によって紛争を解決するようなことが起こらないように政治が働き、国民がそれを監視することだと思う。その意味では、宇宙システムを自衛隊から遠ざけるだけで安心するのは単なる思考停止でしかなく、本当の意味で平和を求める姿ではないと考える。その点から考えても、宇宙基本法の考え方は積極的に評価したい。
いずれにしても、平和は自己満足からは生まれない。平和を維持し、平和を作り出すためにどうするべきかを真剣に考え、自らが行動を起こすことで平和は成立する。いかにして武力行使をしないで国際的な紛争を解決するのか、という点に目標をおいて、その上でどのような防衛政策、宇宙政策を取るべきかを考えていくのが、これからの日本にとって重要と考える。その意味では、昨年末に政権交代が起こり、憲法改正を勇ましく叫ぶ自民党政権、安倍政権には若干の不安を感じる。平和憲法を歪めて解釈し、自己満足で平和が成立すると考えるのも愚かだが、逆に憲法を改正して、それで平和が成立すると考えるのも愚かである。
この両者は、平和を守るという行為を単純化し、内向きな自己満足だけで平和が成立すると考えている点で、コインの裏表でしかなく、思考停止状態から一歩も踏み出していないとしか言いようがない。政権交代後、安倍政権は勇ましい言説を鉾に収め、現実主義的な政策を展開しているように見えるので、当面、この傾向が継続することが望ましいとは思うが、今年夏の参院選で自民党が勝利し、憲法改正の条件が整ってくると、そうともいかないような気もしている。この不安が的中しないことを望むしかない。(おわり)
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