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2012-12-27 00:00
日銀盲従メディアの「バカの壁」
田村 秀男
ジャーナリスト
政権奪取を果たした自民党の安倍晋三総裁は、さっそく国際的な金融論の大家、米エール大の浜田宏一教授を内閣官房参与に迎え入れる方針を固めた。浜田教授が指南役となって「安倍内閣」の「脱デフレ・超円高是正」政策を支えるわけだが、情けないことに、安倍・浜田主導の日本再生策の妨げになりそうなのが、財務・日銀官僚に盲従するメディア主流派の「バカの壁」である。筆者は、全国紙の新聞紙上ではただ1人、財務・日銀官僚の政策に反対してきたのだが、浜田教授は東日本大震災復興増税と消費増税への反対論や日銀の大胆な金融量的緩和への転換を唱えてきた筆者を「正論」だとして一貫して支持してくれていた。
ことし5月、筆者を含む民間有志の研究会が浜田教授と主要全国紙論説幹部、テレビ報道部門幹部の意見交換会を開いた。学習院大の岩田規久男教授、早稲田大の若田部昌澄教授も駆けつけた。浜田教授と同じ考え方を持つ、数少ない日本の経済知性である。日本経済がデフレと超円高から脱出するためにはいかに日銀の量的緩和政策が重要かを浜田教授らが説いたが、メディア側幹部連中は量的緩和が「日本経済にとって劇薬」「インフレになる」ともっぱら日銀政策擁護で譲らない。某教授はあまりにもかたくなに日銀を支持して譲らないメディアにあきれ果て、「メディアにいくら説いても無駄骨だ」と天を仰いだ。
メディア多数を味方につけた日銀の白川方明総裁は日銀が政府から独立して以来15年近くもデフレを放置しておきながら、安倍提案のようにインフレ目標を2~3%と高めに設定すれば長期金利の上昇を招くと言い張り、日経新聞などが同調する。デマである。米連邦準備制度理事会(FRB)はドルを3倍に刷り、インフレ目標を2%に設定しているが、インフレ率は1~2%にとどまり、長期金利は低水準のままだ。株式、国債などの金融資産は増え、個人消費を上向かせている。しかも、FRBのバーナンキ議長は12日、失業率が6.5%に低下するまでゼロ金利政策を続けると決めた。世界の中央銀行の主流は量的緩和からさらに大胆な緩和策へと踏み込んでいる。
金融政策は、ごく限られた数の選ばれた者たちに任せるべきとされ、選挙の一大争点になったこと自体、奇跡に近い。「金融政策」で打って出た安倍氏を勝利に導いた背景には、一般の有権者の多数が在来型の政策では閉塞状況から脱出できないと、メディア主流に「反逆」し出したからだ。それほど、国民の間の危機感は高まっている。浜田教授は高齢にもかかわらず、安倍氏の要請に応じるわけだが、難敵は財務官僚や白川総裁ばかりではない。上記のような有権者多数による判断から大きく遅れているメディア主流が大きな障害物となって立ちはだかる。主流派メディア「バカの壁」を突破するよう、拙論も引き続き筆先を研がねばならないだろう。
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