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2012-12-20 00:00
第3次アーミテージ・レポートを読み直せ
川上 高司
拓殖大学教授
自民党政権が圧勝した。ここで今、2012年8月15日に出されたアーミテージ元米国務副長官、ナイ・ハーバード大教授などの超党派グループの「日米同盟:アジアの安定の支柱」と題する第3次アーミテージ・レポートをもう一度、読み直し、もうじきスタートする米国の対日政策を検討する必要がある。第3次アーミテージ・レポートは、書き出しから「日米関係は漂流し」「同盟が存続の危機に瀕している」と言い切る。野田総理の「日米同盟は新たな高みに達した」(2112年5月、日米首脳会談)との認識と比べて日米間に大きなパーセプションギャップがある。日米同盟が英米同盟なみへ発展すると期待していた過去2度のアーミテージ・レポート(2000年と2007年)とは大きな違いがある。
第3次アーミテージ・レポートでは、日本に対して「一等国として残りたいのか、それとも二等国の地位に落ちぶれたいのか」と決断を迫る。もし日本が二等国に甘んじるのであれば今回の提言は無縁だ。一等国に残れるかどうかは日本の「やる気」次第であり、もし残れれば米国は日本との対等(shoulder to shoulder)な同盟を期待する。日本にはその国力と影響力は十分にあるとする。また、アーミテージ・レポートが出されたのは、おりしも尖閣諸島に香港活動家が上陸し、韓国の李明博大統が天皇謝罪要求をした日にあたる。アーミテージ・レポートの提言内容はそのまま日本のみでなく韓国に対するメッセージとも受け止められる。日韓関係に関しては、歴史問題が両国の不和の原因となるため目の前の共通な脅威である中国に対して勢力を注ぐべきであると強調する。特に、日本には歴史問題に正面から取り組むことを促し、米国を入れた日米韓のセカンドトラックで日韓間の歴史問題を解決するよう提案する。また、日韓米間で棚上げにされている日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)や物品役務相互提携協定(ACSA)の早期締結を望む。
中国に関する分析は過去のレポートとは異なり厳しい。中国は社会・経済的な変動期にあり先行き不透明な状況で、国内分裂の可能性さえもある。その場合、指導部はナショナリズムを奨励し、人権迫害を強めることになると分析する。それに備えて日本は国力と影響力を活用すべきであると提言する。そして、日本は米空母打撃軍のA2AD戦略を促進し、第一列島線を越えることを目論む中国海軍に対して、米軍の「Air Sea Battle」構想と自衛隊の「動的防衛力」構想で対抗すべきだ。また、中国との偶発的衝突に備えて米軍と自衛隊の相互運用能力を向上すべきだと強調する。中でも、米海兵隊と陸上自衛隊の水陸両用作戦上での相互運用能力の深化が重要であるとする。
その他、ペルシャ湾での自衛隊の掃海活動と南シナ海での米軍との共同監視活動の必要性をあげている。そして日米間の原子力などのエネルギー分野での協力、日米間での武器輸出取引の促進、サイバー等が目新しい提言である。日本はここに来て自衛隊の南西シフト、武器輸出三原則の緩和、原子力基本法改正、改正宇宙航空研究開発法など従来の安全保障の難題が次々にクリアーされた。ただ問題なのは、アーミテージ・レポートが過去から言い続けている集団的自衛権の行使である。さらに、厳しい財政事情ではあるが、防衛費の増加と自衛隊員の増員も無論重要である。今回のアーミテージ・レポートは米大統領選挙に併せて発表された。そういった意味で今回の報告書は第二次オバマ政権の対日政策の指針となる可能性もある。検討が重要だ。
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