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2012-12-18 00:00
対中補償要求から逃げる日本国外務省
田村 秀男
ジャーナリスト
日本企業にとって中国の反日暴力デモの最大の教訓は、中国共産党が投資リスクそのものに転化してしまった点である。共産党の幹部が誰であろうと、もはや日本企業にとってパートナーではありえない。日本企業の対中進出は1970年代末、松下電器産業(パナソニック)の創業者、松下幸之助氏が最高実力者、トウ小平氏の要請に応じてブラウン管工場建設を決断して以来、本格的に始まった。大手メーカー、商社、金融、流通業など主要企業、日本経団連など財界のトップたちは絶えず北京の共産党中央の幹部や首脳と会合を持ち、信頼関係の構築に努めてきた。
この進出方式は「法治」ではなく、「人治」国家の中国に最適で、現地法人には董事長と呼ばれる経営首脳とは別に、この法人の共産党委員会書記のポストを用意して報酬を払う。この書記が「工会」と呼ばれる労働組合を相手に低賃金を飲ませ、労務上のトラブルを水面下で処理する。共産党組織は党総書記を頂点にした中央政治局常務委員(9人)が最高意思決定機関であり、各委員につながる人脈が全国に配置されている。このピラミッド型システムが各地での日本企業の投資をサポートする中で、日本企業は電機も自動車も大手から末端下請けにいたるまで安心して対中投資、生産、販売に励んできた。
ところが、数年前からこのシステムはほころびが目立ってきた。農村部出身の労働者が待遇改善や賃上げを要求し、労働争議が頻発するようになったのだ。党官僚指導による工会は労働者から無視され、影響力を失った。背景には貧富の格差の拡大があり、不信感がこれ以上広がらないよう、党中央や地方の党幹部も労働者大衆の不満に応えざるを得なくなった。権力者がそうなら、待遇改善を求める労働者側の要求はさらにエスカレートするのが中国社会の常で、トラブルが慢性化してきた。まともな労働組合も運動もない中国に日本のような労使協調関係は望むべくもない。
そこに起きたのが沖縄県尖閣諸島の国有化に対抗した党主導の反日デモである。党中央は「愛国無罪」の旗を振った。すると各地の党組織が競うように「日の丸」への攻撃を始め、「井戸を掘った」松下の工場を含め、日系の工場や店舗への放火や略奪を後押しした。これまで日本企業の対中投資の安全を保障してきた党システムは逆の破壊装置に変わってしまった。共産党中央が格差拡大や鬱積する社会的な不満を解決できなくなって、反日ナショナリズム活用に走る。進出企業の立場は弱く、クレームを付けようものなら、しっぺ返しを食らう。そこで、前面に出るべきなのは日本政府なのだが、今回の暴力デモで甚大な被害を受けた日本企業の損害賠償について、日本の外務省は企業に対し、「中国の国内法に基づき手続きをとれ」と突き放している。そんな政府が世界のどこにあるだろうか。
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