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2012-12-08 00:00
オバマ2期目の中東政策は柔軟路線へ傾くのか
川上 高司
拓殖大学教授
11月14日から始まったガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの武力紛争は、現地時間の21日の停戦の合意により終了した。イスラエルは国境に地上部隊を集結させガザ地区に侵攻させんばかりであった。その迫り来る戦争の足音に世界中が動揺した数日間であったが危機は回避された。前回イスラエルがガザ地区を大規模に侵攻したのは2008年である。翌年に選挙を控えるネタニヤフ首相の支持率向上を狙ってのパフォーマンスとも言われた。2008年当時はアメリカの大統領はイスラエルと親密な関係にあったジョージ・ブッシュであったし、エジプトには親イスラエル派のムバラク大統領がいた。トルコとの仲もよかった。
今回も来年の選挙に向けてのパフォーマンスではないかと噂された。だが、4年経ってイスラエルをとりまく環境は大きく変わった。2010年以来トルコとの仲は冷めている。今回のガザとの武力紛争に関しトルコのエルドガン首相は「4年前とは状況が違う」と早々に警告を発していたし、イスラエルを「テロ国家」と非難するほど両国の関係は最悪である。エジプトはムバラク時代とは異なり親パレスチナに傾き、イスラエルにとりエジプトの動向を気にしながらガザへ侵攻することは厳しい。そして何よりもアメリカではイスラエルにつれないオバマが再選を果たした。どこまでアメリカはイスラエルを支持してくれるのか、ネタニヤフ首相は気が気でないだろう。選挙前のパフォーマンス以外に、オバマの2回目の大統領就任式前という時期に大統領の気持ちを確認したかったのかもしれない。
クリントン国務長官がネタニヤフ首相やエジプトのモルシ大統領と会談した後、オバマ大統領はネタニヤフ首相に電話をして停戦を受け入れるように圧力をかけた。ネタニヤフ首相は停戦を受け入れると返事をしたが、受け入れに関して条件をつけた。停戦後にガザから攻撃を受けたらアメリカはイスラエルの「自衛権の行使」として反撃を認めること、ミサイル防衛システムの強化など軍事支援を拡大することを約束させた。停戦が実効するとネタニヤフ首相は「イスラエルの勝利だ」と戦果をすぐさまアピールした。イスラエルにしてみればアメリカの支持を確約させたことは大きな勝利と言え、ネタニヤフ首相は安心して来年の選挙に臨むことができる。
ハマスにとってもイスラエルに屈しなかったという点では勝利といえるであろう。しかも今回は国際世論がいち早く停戦に動いた。エジプトだけでなくトルコや中国も早くから停戦の仲介の道を探った。チュニジアやトルコの外相やモルシ大統領もガザを訪問し、ハッカー集団の「アノニマス」はイスラエルへのサイバー攻撃を行った。このような動きは、ガザがもはや国際社会の中で孤立していないことを示している。もちろん根本的な解決にはまだ道のりは遠い。それでも変化が起こりつつあることは確かであるし、その流れをどう捕らえるのか。オバマ大統領の中東政策に注目したい。
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