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2012-11-23 00:00
(連載)日米同盟を脅かす「財政の崖」(2)
高畑 昭男
ジャーナリスト
米中の差は絶対額でまだ5倍(公表額)近くあるとはいうものの、彼我の削減・増強のペースを考えると、5年後、10年後が思いやられる。こうした削減の嵐の中で、オバマ氏は「全体の削減は避けられないが、アジア太平洋の米軍プレゼンスは堅持する」と約束した。アジア歴訪でも「アジア太平洋重視外交」の継続と強化を怠りなくアピールに努めた。それでも、外交というソフトパワーを支える基盤は、ハードな軍事力の備えがあってこそである。この鉄則を忘れてはなるまい。
胡錦濤体制から習近平体制へ指導部が交代した中国は、「強固な国防と強大な軍隊」を柱に「海洋強国を建設する」(胡錦濤氏の政治報告)という。海洋権益の拡大に一層の拍車がかかりそうだ。その先にあるのは、東シナ海、南シナ海に米軍を寄せつけない接近阻止・領域拒否戦略(A2/AD)に加え、西太平洋に及ぶ海洋覇権を力ずくで樹立することだと欧米の戦略専門家は指摘する。日本の尖閣諸島奪取を狙った攻勢も、その一環としてとらえる必要がある。尖閣防衛は日本の平和と安全に直結するだけでなく、アジア太平洋全体の秩序と安定の維持につながる重要な戦略的課題という認識が欠かせないのはこのためだ。
不幸にして米国が「財政の崖」に突入し、米国防費の削減や不足が恒常的現実となる事態に備えるためにも、日本は自助努力を飛躍的に高めるとともに、日米の共同防衛態勢の強化や効率化を進めることが不可欠といえる。まずは自らの防衛に一層の責任を持ち、その決意を内外に示すために防衛費の思い切った増強と充実が必要だ。集団的自衛権の行使容認、普天間飛行場移設促進を含む米軍再編の加速、日米防衛指針の見直しなども早急に進めなければならない。同盟の抑止力の実効性を維持する上で、カネ、ヒト、モノの相互提供や交換を工夫していくことも重要な課題になる。
また、仮に「崖」が避けられたとしても、イランの核問題やシリア情勢などで米国の力が再び中東に割かれる事態があり得る。その場合でも、日本が同盟国としてアジア太平洋の守りをいかに補完するか、インド洋や中東で米国に対してどんな支援ができるかなどについて両国間で協議しておくことが今後欠かせないだろう。オバマ氏が直面している「財政の崖」によって、日本の防衛と国民の安全も崖っ淵に立たされている。政府は、間違っても「対岸の火事」などと傍観していてはいけない。(おわり)
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