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2012-11-17 00:00
(連載)対中戦略の柱は日露平和条約の締結(2)
加藤 朗
桜美林大学教授
日本は対中戦略の一貫として日露平和条約を望んだとしても、一方のロシアには締結の意欲があるだろうか。その可能性を示唆する論説を24日の『産経新聞』「正論」に木村汎北海道大学名誉教授が書いている。要するに表向き対等な関係に見えるが、中国が台頭する現状ではロシアは中国の弟分に成り下がり、極東地域は「中国の事実上の植民地になりかねない」。この屈辱的状況を避けるには、日本の協力で極東を開発することが必要になる、ということである。
日本にも極東のエネルギー開発で大きな利益がある。平和条約の締結は両国ともに国益に合致する。そこで何よりも領土問題の解決が必要になる。木村名誉教授は、四島返還を条件にシベリア開発に協力するという構想のようだが、本音のところでは、落としどころを二島返還にあるとみているのではないか。仮にそうだとしても、中国の華夷秩序に組み入れられよりも、二島を代価として独立を維持する方がはるかにましである。
ここでは詳細には触れないが、四島返還論には法的問題を指摘する向きもある。親米派からは日米安保の強化により中国をけん制せよという声が聞こえてきそうである。しかし、日米安保による対中抑止戦略がそもそも幻想でしかない。日米両国にとって中国は、平和条約を締結した友好国ではないにせよ冷戦時代の日米安保が想定していたような敵国ではない。
それどころか日本の経済界もそうだが、討論会でオバマ、ロムニーもChina can be a partnerと言ったように経済面では友好国である。キッシンジャーに至っては、経済どころか政治的にも軍事的にも友好関係にあるとみなしているようだ。現状では米国は、中国が米国の経済的利益を害さない限り、日本の国益など考慮せず、中国の地域覇権を容認するだろう。だからこそ、日本は日本の国益に沿った日露平和条約の締結という独自の対中戦略が求められるのである。(おわり)
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