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2012-11-02 00:00
「北風」路線から「太陽」路線に転じた自民党
杉浦 正章
政治評論家
筆者の「太陽路線しかない」という11月1日の予言がもう当たった。自民党がその解散戦略を大きく転換した。審議拒否の「北風路線」から審議入りを容認する「太陽路線」に転じた。「近いうち解散」の約束を事実上反故にされかねないにもかかわらず、自民党総裁・安倍晋三は、解散へのさらなる環境整備を求める首相・野田佳彦の言葉を信用するという“賭け”に出たことになる。この“賭け”が完全に解散恐怖症に陥った民主党政権に利くかどうかだが、野田の主張する3条件を満たすのだから、野田が“背水の陣”に追い込まれたことは、間違いない。安倍は1日の街頭演説で衆議院の解散・総選挙について、「野田首相が言う解散の前提条件は私たちも積極的にやっていきたいので、約束を果たして年内に投開票を行うべきだ。野田首相がASEM(アジア・ヨーロッパ首脳会議)に出かけている間に各委員会の議論をスタートしても構わないし、赤字国債発行法案も含めて議論してもいい」と発言した。これは総裁選後同党執行部が取ってきた「嘘をつく政府・与党を相手に国会審議に応じることにはならない」(幹事長・石破茂)という審議拒否路線を完全に撤回したことになる。これにより国家や自治体財政に危機をもたらす赤字国債発行法案不成立という事態は早期に解消される方向となった。
方向転換には1日の衆院本会議における安倍と野田のやりとりが大きく作用した。安倍の解散要求に対して、野田は「先の党首会談で『近いうちに国民に信を問うと申し上げた意味は大きく、環境整備をしたうえで解散を判断したい』という話をしたが、これは特定の時期を明示しないなかでのぎりぎりの言及だ」と発言した。さらに、環境整備のテーマとして、赤字国債発行法案や衆議院の1票の格差、社会保障制度改革国民会議を挙げ、「条件が整えば、きちっと自分の判断をしていきたい」と明言したのだ。安倍はこの野田発言に全体重を乗せたことになる。本会議の発言であり、8月の密室での「近いうち解散」の約束とは異なって、ただの公約ではない。議事録に残る公約の最たるものである。安倍はこれをあえて信用するという“賭け”に出たのだ。さらに審議拒否路線を進めれば、赤字国債を人質に取った姿の露呈となり、世論の矛先は自民党に向かう。安倍はせっかく世論調査によっては民主党の3倍にも達している支持率が急落することを恐れたのだろう。
こうした自民党の柔軟路線に対して政権サイドは、依然解散拒絶反応を続けている。官房長官・藤村修は、「解散に関して、条件や前提があるということはなく、それははっきりと否定している。関係ないことだ」と発言。幹事長・輿石東にいたっては「俺の言った通りだ。向こうから動いてきた」と漏らしているという。藤村も輿石もひしひしと解散包囲網を感じているのだろう。“強がり”で突っ張っているが、やがてかく“吠え面”が見たいものだ。第一、野田が前提条件を示しているのに、「はっきり否定している」とは何事か。スポークスマンが首相の発言を否定してはどうしようもない。藤村は自らの落選を恐れているのかも知れない。一方で野田の方は、1日「解散は寝言でも言わないが、常在戦場だ」と述べた。この切羽詰まった時点での常在戦場発言は、明らかに選挙近しの野田の心情を印象づける。
ただその野田が「近ごろ少しヘンよ」なのだ。2日の本会議でもろれつが回らず、原発に関する答弁で「経験のない困難を伴うことから」と言ったまではよかったが、言葉に詰まってあとは「ことことこと」と言うばかりで、先が続かなくなった。頬をたたいて「すみません」と謝ったが、前日の若手慰撫工作で相当呑んだものとみられる。近ごろはハイビジョンの大画面でアップの表情を見られるから観察がしやすいが、野田の目はこのところ真っ赤になっていることが多い。酒の飲み過ぎか、一夜を悶々として過ごしているのか、重圧感は相当なものだろう。気迫も感じられず、読売からは「燃え尽き症候群」と書かれてしまった。まるで安倍政権の末期のような状況となってきたのだ。無理もない、マスコミの論説はこぞって早期解散。財界も1日は、日本商工会議所会頭の岡村正が「来年度予算は、新内閣が編成に当たるべきだ」と、野田内閣を見放す発言をした。これで経済3団体はすべて早期解散要求と野田政権不支持を表明したことになる。加えて自民党が3条件を呑む柔軟路線を打ち出した。四面から楚歌が聞こえ、包囲網が狭まってきていることをひしひしと野田は感ぜざるを得ないだろう。ただ自民党の柔軟路線は時間がかかる。今月半ばまでの解散で12月9日か16日の投開票を目指す日程は、物理的に遅らさざるを得なくなる可能性がある。ただし佐藤栄作がかつて12月27日の土曜を投票日にしたが、土曜を入れれば年末までの日程はバリエーションがいくらでもある。臨時国会の延長もやがて俎上(そじょう)に登る可能性が出てきた。
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