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2012-10-22 00:00
自民・公明両党の解散要求は「憲法違反」の疑いあり
若林 洋介
学習塾経営
衆議院の予算先議・議決を優先するという衆議院の優越性は、わが国の衆参二院制において予算執行に支障を来たさないための憲法で規定された重要な規定である。したがって現在起きているような特例公債法案をめぐって、予算執行が滞る事態を生じさせないということは、この憲法の精神からいっても立法府の国民に対する義務であると言わなくてはならない。特例公債法案については、野党は棄権して法案を通すということを慣例化すべきではないのか。
一方、衆議院の解散権は、憲法で規定された内閣総理大臣の専権事項であり、野党がそれに対して干渉することは本来許されるべきことではない。なぜか。政権与党は、少なくとも国民から政権を託された任期は4年間であること、またいつ何どき、大地震・津波、武力衝突、テロなどが起こることがあるかも知れず、内閣総理大臣は自衛隊の最高司令官の立場にある以上、その解散権を束縛することは、その権限を縮小することになるからである。総選挙となれば、約1か月間の事実上の政治空白が生じてしまい、行政府の機能も万全な状態ではなくなってしまうわけである。各省庁の国務大臣なども自分の選挙の心配せねばならず、職務放棄状態に陥ってしまうからである。
今回のような事態がまかりとおると、つまりわが国の二院制に伴うネジレ状態を想定した、衆議院の予算議決に対する優越権を規定した憲法の精神はまったく無力化してしまうという前例を作ることになる。そうなるとネジレ状態においては、事実上憲法上想定されなかった衆議院・参議院の二重権力体制が生じることになるのである。つまり衆議院の一期4年間の政権任期というものがまったく機能不全状態に陥るのである。ひとたび衆参ネジレ状態が生ずれば、その政権は一年以内に解散要求とひきかえに特例公債法案を通さなければならないという前例ができてしまうのである。
このような衆議院・参議院の二重権力体制は、明らかに憲法違反の疑いのある行為ではないのか。憲法で担保された議会政治そのものの崩壊につながるきわめて危機的な状態であると言わざるをえない。かつての自民党主軸の長期政権のシステムよりは、現行の政権交代のシステムの方が、はるかに政権の安定度は低くなることは免れがたい。であればなおのこと、衆議院・政権与党・内閣総理大臣の権限を強化する方向でなければ、ますます政権の不安定化は進行するのである。自民・公明両党が参議院の衆議院に対する機能強化という方向で、前例を作ってしまうならば、自分たちが政権を取った場合、野党から同じ事をされることは眼に見えているではないか。私は、政権交代の大きな意義は、自民・公明・民主三党が、与党・野党両方の体験を通じて、国会運営・国会審議がより成熟したものとなることであると期待していたのであるが、結果を見てみるとその期待は見事に裏切られてしまったようで残念でならない。
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