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2012-10-22 00:00
これでは「嘘つき首相」の「野垂れ死に」路線だ
杉浦 正章
政治評論家
いずれにしても早期解散に追い込まれるのだから、言ってみれば「往生際が悪い」と言うことだろう。3党党首会談で自民、公明両党を激怒させて、首相・野田佳彦が得たものは、“野垂れ死に”路線に他ならない。このま政権にしがみつけば「嘘つき首相」の評価が定着する。既に内閣支持率の急低下を招き、危険水域の10%台に突入した。竹下内閣並みの支持率3%もあり得る。解散しなければ、政権を投げ出す総辞職しかなくなるのだ。進退は窮まった。ここは少しでも支持率があるうちに、早期解散・総選挙に踏み切るしか選択肢はないのだ。国家戦略相・前原誠司の「野田は年内解散に踏み切る」という“読み”が、一番まっとうだ。早期に党首会談を再び開催して、追い込まれ解散でなく話し合い解散を選択をすべき時だ。自民党も、マスコミも、野田から「解散で新提案が全くなかった」かのように反応しているが、野田は、本人にしてみればぎりぎりの解散新提案をしている。「政権の延命を図るつもりはない。条件が整えば自分の判断をしたい」と述べている。これは首相として発言の限界であろう。しかし前宣伝が悪かった。野田が「一蓮托生」とする幹事長・輿石東が大ミスリードをしたのだ。輿石の「新しい具体的な提案」発言が、自民党総裁・安倍晋三をして「年内解散」と判断させる結果を招いた。安倍は、少なくとも「近いうち」の抽象表現から「年内」の表現くらいは入るだろうと思ったが、当てが外れたのだ。安倍と公明党代表・山口那津男が激怒するのも無理はあるまい。
かつて田中角栄は、首相たるものの心得として「首相は衆院解散と公定歩合の変更については、本当のことを言わなくてもいい。ただしウソをついてはいかん」と述べていた。この意味は解散判断の間違いは、代議士ばかりではなく、マスコミ関係者の「クビ」にも直結するものであり、人情味のある田中としては、「うそによる解散ミスリード」を戒めたのだ。今度の場合、野田は輿石発言の結果大うそをついたことになる。安倍にしてみれば、ぬか喜びをさせられたわけで、党内的にも信頼度の低下を招く結果となった。この状況を見てか、副総理・岡田克也が「安倍さんが野党の党首として振る舞うか、次期首相になる人として振る舞うのかを見ていたが、野党の党首としての振る舞いであった。残念なことであった」と安倍をさげすむ発言をした。これには驚いた。政治家のレトリックは多種多様であってしかるべきだが、野田を見ていた国民がびっくりする。なぜなら一国の首相が大うそをついたことを棚に上げているからである。筆者が岡田流に言えば「首相として振る舞うかどうかを見ていたが、野党もしない振る舞いであった」ということになる。
これに比較して、前回も褒めたが、前原の「読み」はここに来て冴えている。10月21日前原は「年明けに解散をするのなら『近いうちに』とは言えない。野田首相は自分のことばに責任を持つ信義を守る人だ。年内に解散しないことはないと思う。赤字国債発行法案などをどうするのかという話をすれば、おのずと自民・公明両党の主張と同じようなところに落ち着くのではないか」と年内解散を明確に述べたのだ。これを民主党幹事長代行・安住淳が否定しているが、自分の発言と矛盾する。安住は20日にテレビで「総理が近いうちに国民の信を問うことをしっかりと実行することは、いろいろな言葉を交えて言っている」と指摘しているではないか。自分の発言はよくて、他人の発言は悪いことになり、支離滅裂だ。野田が「発言の重みは自覚している」「延命を図らない」「条件が整えば判断する」と述べたことは、早期解散の意思表示と受け止めるべきだろう。
これに対して自民党は「喧嘩のための喧嘩」を展開しようとしているかに見える。石破は「これほど腹を立てたのは初めてだ」と強調する。まるでテレビで国民の同調を求めているような姿勢であり、鼻につく。野党が解散に追い込もうとする姿勢は理解できなくもないが、流れをうまく追求すれば「話し合い解散」へと結びつけられる事態を、あえてぶちこわすこともなかろう。もう少し大人になるべきだ。追及材料には事欠かないのだ。今後どうなるかだが、まず野党の自民党は、おもちゃ売り場で駄々をこねている子供のように「解散を言わなければ審議拒否だ」と叫ぶ必要はない。もう民意は野田政権を離れた。朝日の世論調査も最低の18%に落ち込んだ。まだまだ急降下するだろう。10%台では政権の延命は図ろうにも図れないのだ。これを「死に体内閣」という。まずこの急所を押さえた対応が必要であろう。そして責任政党らしさを発揮するのだ。つまり29日の臨時国会から赤字国債発行法案と定数是正の審議に直ちに入り、その成立を条件に野田を臨時国会解散と年内選挙に踏み切らすのだ。野田は「他律的な解散」の状況作りを待っている側面もあるのだ。そのために石破が国会までの間の再党首会談を提案し、安倍も「前原の発言を受けて、野田首相からも何らかの働きかけがあると思うのが常識だ」と再会談に期待を表明している。まさに再会談を行うべき時だ。
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